スペクトラムアナライザの選び方 ─ 用途・性能・価格のバランスで賢く選ぶ

 

**スペクトラムアナライザ(スペアナ)**は、周波数成分を視覚化できる便利な計測器ですが、
モデルによって性能や価格帯が大きく異なります。使用目的に合った機種選定が非常に重要です。

ここでは、初心者向けの選定ポイントから、技術者向けの具体的な比較項目までを整理します。


✅ ステップ①:用途を明確にする

用途カテゴリ 主な使用目的 選定のポイント
EMI・ノイズ対策 開発段階のノイズ源特定や簡易EMC測定 9kHz~1GHz以上の広帯域、RBW調整可、プリアンプ付きが便利
無線・通信開発 RF信号の確認、スプリアス測定、通信波形の確認 帯域幅が数GHz、トラッキングジェネレータ搭載だと便利
製造・検査工程 出荷前の品質チェック、規格適合性評価 安定動作・繰り返し性・リミットライン設定が重要
アマチュア無線・教育用 基本的なRFの観察や波形表示 手頃な価格帯、100kHz~2GHz程度で十分
オーディオ・電源回路 リップル・スイッチングノイズ観測 低周波(kHz〜MHz)重視、ゼロスパン機能も有用

✅ ステップ②:重要な仕様項目を確認

項目 内容・選び方
周波数レンジ 観測対象の帯域+余裕を持たせた範囲(例:2.4GHzを見るなら最大3GHz以上)
RBW(分解能帯域幅) 小さいほどピークを細かく区別できる(10Hz〜1MHzの調整可能なモデルが便利)
ダイナミックレンジ 強い信号と弱い信号を同時に見たい場合は広い方が良い(例:≥100dB)
表示平均ノイズレベル(DANL) 微弱信号を観測したい場合はノイズフロアが低いモデルを選ぶ(例:-150dBm以下)
入力アッテネータ 過大入力から機器を保護。手動/自動切替できると便利
ゼロスパン機能 AM/FM変調波やパルス波形の時間軸観察に使用。ほとんどのデジタル機に搭載。

✅ ステップ③:使用環境と予算を考慮

観点 内容
操作性・画面サイズ タッチパネルや高解像度液晶は現場作業や教育用途で便利
インターフェース USB/LAN/HDMIなどPC連携の可否を確認(リモート制御など)
サイズ・可搬性 卓上型/ハンディ型/バッテリー駆動など使用環境に合わせて選択
価格帯の目安  
 ・10万円前後:入門モデル(教育・簡易用途)  
 ・30万〜80万円:中堅機(通信・EMI開発向け)  
 ・100万円以上:リアルタイム・ハイエンドモデル(研究・認証用)  

✅ まとめ:選定ポイント早見表

選定項目 初心者 中級者(EMC/RF開発)
周波数レンジ ~2GHz ~3〜40GHz(目的次第)
RBW 固定でも可 10Hz単位で調整できる機種が理想
DANL -120dBm程度 -140dBm以下推奨
プリアンプ 任意 内蔵モデル or 外付け活用推奨
価格 10万〜30万 50万〜100万以上も視野に

ご参考に

スペアナ選定時は「何を測りたいのか?」「どこで使うのか?」「どこまでの精度が必要か?」の3点を明確にすると失敗が少なくなります。


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