ゲートバイアス(Gate Bias)とは
~MOS構造やFETの動作制御に不可欠な電圧パラメータ~
■ 定義
**ゲートバイアス(Gate Bias)**とは、MOSFETやJFET、HEMTなどのトランジスタ構造において、ゲート端子に印加される直流電圧のことを指します。
この電圧により、チャネル領域における電界が制御され、キャリアの蓄積・空乏・反転状態を切り替えることが可能となります。
■ MOS構造における役割
MOS構造(例:MOSFET、MOSキャパシタ)では、ゲートバイアスの値によって、半導体内部の状態が次のように変化します:
ゲートバイアス | 状態 | 特徴 |
---|---|---|
負バイアス(n型基板) | 蓄積 | 多数キャリアが界面に集まる(高容量) |
中性領域 | 空乏 | キャリアが後退し、空乏層が形成される |
正バイアス(n型基板) | 反転 | 少数キャリアが蓄積、導電チャネル形成(しきい値超え) |
■ C–V測定におけるゲートバイアスの意義
ゲートバイアスは、C–V測定での横軸(電圧掃引)の中心要素であり、以下のパラメータの抽出に用いられます:
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平坦バンド電圧(Vfb)
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しきい値電圧(Vth)
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ドーピングプロファイル(1/C²解析)
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界面準位密度(Dit)(HF/LF C–V比較法)
■ パワーデバイスでの活用例
SiC-MOSFETやGaN-HEMTなどのパワーデバイスでは、ゲートバイアスの正確な制御が特に重要です。
たとえば:
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スイッチング特性の最適化
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ゲート酸化膜の信頼性評価(BTI試験)
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ゲートリーク電流の測定
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動的特性評価(Rg、Ciss等)
■ 測定装置における実装例(CV測定器など)
ゲートバイアス機能を備えた測定装置(例:TECHMIZE TH512)では、±数十V以上のスイープ可能な高精度DCバイアスソースを内蔵し、以下の操作が可能です:
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自動電圧掃引によるC–V特性取得
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ステップ印加によるトラップ応答時間測定
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高電圧印加による信頼性試験(TDDB、BTI)
■ 注意点・測定時の留意事項
項目 | 内容 |
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✅ 印加上限電圧の確認 | 試料の酸化膜破壊電圧を超えないようにする |
✅ 電圧ステップと掃引速度 | 高速すぎるとトラップ応答が追従できない |
✅ 温度の影響 | キャリア挙動が変化するため温度制御が重要 |
✅ バイアスストレス効果 | 長時間印加によりパラメータが変動することあり |
■ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | トランジスタのゲート端子に印加される電圧 |
役割 | 電界制御によりキャリア分布・導電特性を制御 |
測定用途 | C–V測定、Vth抽出、Dit評価、信頼性試験など |
関連用語 | Cox、Vfb、Vth、蓄積・空乏・反転状態 |
搭載機能例 | DCバイアススイープ、過電圧保護回路など |
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