マスター波形(Master Waveform)とは

~良品基準として使用される“正常な波形データ”~


■ 定義

**マスター波形(Master Waveform)**とは、電子部品やモジュールの製造・検査工程において、正常品(良品)から取得された代表的な応答波形を記録・保存したものを指します。
この波形は、検査対象品との比較基準として使用され、異常の有無を判定するリファレンスデータとなります。


■ 役割と重要性

項目 内容
✅ 基準波形 「良品状態」が記録された比較元となる信号波形
✅ 自動判定の基準 差分比較、マッチング率、閾値超過などの判定に使用
✅ 工程内スクリーニング 生産ラインでの不良品検出を迅速・安定化
✅ 品質トレーサビリティ 製品ロットごとの品質保証記録として活用

■ 主な使用機器と対象

使用機器 対象品 マスター波形の取得タイミング
インパルス巻線試験機 モーター、トランス、リレー 初回良品、製造初期サンプルなど
オシロスコープ 電源モジュール、スイッチング素子 設計段階の基準波形取得時
VNA(ネットワークアナライザ) 高周波部品、RFモジュール 校正後のSパラメータ基準波形
LCRメーター+波形出力 パッシブ部品 繰返し応答波形による変動監視

■ マスター波形の比較手法

手法 特徴
✅ 波形差分法(ΔWaveform) 良品波形との振幅・位相の差異を時間軸で比較
✅ 相関係数法(Correlation) 波形の形状一致率を数値化して判定(例:一致度 ≧ 98%)
✅ スミスチャート比較(RF) Sパラメータのベクトル差をグラフ上で可視化
✅ AI/機械学習判定 過去データ学習による正常/異常分類

■ マスター波形の運用ポイント

項目 ポイント
✅ 波形の安定性 環境(温度、湿度、ノイズ)変動のない条件で取得
✅ 複数波形の平均化 個体差を抑えて代表波形を構築(統計的基準)
✅ 定期的な再取得 部品ロット変更や設備更新時に更新
✅ 保存形式の統一 CSV、BIN、画像形式など、システム互換性を保つ

■ まとめ

項目 内容
定義 良品の基準波形として記録される参照データ
役割 比較対象として不良検出、自動判定、品質保証に使用
比較方法 差分、相関係数、FFT比較、AI解析など
使用機器 巻線試験機、オシロスコープ、VNA、LCRメーター等
T&Mの支援 マスター波形作成支援、自動判定システム構築サポート