✅ 危険電流
① 危険電流の基本定義
電流値 | 影響 | 備考 |
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1mA以下 | 感知困難 | 通常安全域 |
1~5mA | ピリピリ感 | 人体に感じる電流(感知閾値) |
5~10mA | 筋収縮・離脱困難開始 | 危険領域の入口 |
10~30mA | 呼吸障害、心室細動リスク | 非常に危険 |
30~100mA | 心停止・重篤障害 | 極めて危険 |
100mA超 | 瞬時に生命に危険 | 通電時間が短くても致命的 |
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規格的には**5~10mA超が「危険電流域の開始」**とされることが多い。
② 危険電流に関連する安全規格例
規格 | 適用範囲 | 危険電流基準 |
---|---|---|
IEC 61010 | 試験・測定機器 | 5~10mA超は危険と扱う |
IEC 60479 | 感電生理学的研究 | 詳細な人体通電影響を規定 |
IEC 60601 | 医療用機器 | 漏洩電流 100~500μA以下 |
RCD規格(漏電遮断器) | 感電防止 | 30mA動作が主流 |
③ 測定器設計と危険電流
A. 電流測定機能
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DMMの電流測定機能自体は危険電流を発生しない
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測定対象回路側に危険電圧源がある場合は注意
(例:AC100V系統で電流測定時の誤配線)
B. 電圧測定機能
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高電圧印加 → 誤操作時に大電流が流れ得る経路を形成しない設計が重要
C. 抵抗測定機能
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DMMで低抵抗を測定する際の試験電流、すなわち流そうとしている電流は10mA程度の場合があるが、そもそも電圧が低く、人体に危険電流を流せるほどの電力は持っていない
D. 出力系(信号源など)
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任意波形発生器や信号発生器も通常は電圧・電流制限回路を内蔵
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出力短絡時でも人体に危険な電流が流れない設計(SELV設計)が原則
E. 絶縁・保護設計
保護要素 | 内容 |
---|---|
内部絶縁 | 危険電位が筐体外に出ない設計 |
保護ヒューズ | 過電流時に迅速遮断 |
過電圧クランプ | サージ・誤操作対策 |
シャント保護 | 過電流に対してシャント抵抗を守る |
接触防止構造 | 帯電部露出防止 |
④ 測定器使用時の実務注意
シチュエーション | 注意点 |
---|---|
電流測定時 | 端子入替、直列接続、レンジ確認 |
高電圧系測定 | 事前に絶縁状況を確認 |
プローブ破損時 | 絶縁不良に注意 |
ヒューズ切断時 | 正規品交換・無理なバイパス禁止 |
医療・生体測定 | 微小漏洩電流制限を守る |
⑤ 測定器と危険電流の基本原則
項目 | 原則 |
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測定器出力 | 危険電流が出ない設計が義務付けられている |
測定器入力 | 危険電位印加時の保護設計が必要 |
誤操作時の防御 | 誤挿入保護・自動遮断・ヒューズ保護が重要 |
安全規格適合 | IEC61010, CAT規格適合機を選定 |
✅ まとめ
危険電流は5~10mA程度から人体に有害となり、30mAを超えると感電遮断装置が働くレベル。
測定器は出力側で危険電流を発生させない設計が基本。
入力側では誤操作・誤接続時にも危険電流が発生しない設計(保護回路・ヒューズ)が重要。
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