危険電流


危険電流の基本定義

電流値 影響 備考
1mA以下 感知困難 通常安全域
1~5mA ピリピリ感 人体に感じる電流(感知閾値)
5~10mA 筋収縮・離脱困難開始 危険領域の入口
10~30mA 呼吸障害、心室細動リスク 非常に危険
30~100mA 心停止・重篤障害 極めて危険
100mA超 瞬時に生命に危険 通電時間が短くても致命的
  • 規格的には**5~10mA超が「危険電流域の開始」**とされることが多い。


危険電流に関連する安全規格例

規格 適用範囲 危険電流基準
IEC 61010 試験・測定機器 5~10mA超は危険と扱う
IEC 60479 感電生理学的研究 詳細な人体通電影響を規定
IEC 60601 医療用機器 漏洩電流 100~500μA以下
RCD規格(漏電遮断器) 感電防止 30mA動作が主流

測定器設計と危険電流

A. 電流測定機能

  • DMMの電流測定機能自体は危険電流を発生しない

  • 測定対象回路側に危険電圧源がある場合は注意
    (例:AC100V系統で電流測定時の誤配線)

B. 電圧測定機能

  • 高電圧印加 → 誤操作時に大電流が流れ得る経路を形成しない設計が重要

C. 抵抗測定機能

  • DMMで低抵抗を測定する際の試験電流、すなわち流そうとしている電流は10mA程度の場合があるが、そもそも電圧が低く、人体に危険電流を流せるほどの電力は持っていない

D. 出力系(信号源など)

  • 任意波形発生器や信号発生器も通常は電圧・電流制限回路を内蔵

  • 出力短絡時でも人体に危険な電流が流れない設計(SELV設計)が原則

E. 絶縁・保護設計

保護要素 内容
内部絶縁 危険電位が筐体外に出ない設計
保護ヒューズ 過電流時に迅速遮断
過電圧クランプ サージ・誤操作対策
シャント保護 過電流に対してシャント抵抗を守る
接触防止構造 帯電部露出防止

測定器使用時の実務注意

シチュエーション 注意点
電流測定時 端子入替、直列接続、レンジ確認
高電圧系測定 事前に絶縁状況を確認
プローブ破損時 絶縁不良に注意
ヒューズ切断時 正規品交換・無理なバイパス禁止
医療・生体測定 微小漏洩電流制限を守る

測定器と危険電流の基本原則

項目 原則
測定器出力 危険電流が出ない設計が義務付けられている
測定器入力 危険電位印加時の保護設計が必要
誤操作時の防御 誤挿入保護・自動遮断・ヒューズ保護が重要
安全規格適合 IEC61010, CAT規格適合機を選定

まとめ

危険電流は5~10mA程度から人体に有害となり、30mAを超えると感電遮断装置が働くレベル。
測定器は出力側で危険電流を発生させない設計が基本。
入力側では誤操作・誤接続時にも危険電流が発生しない設計(保護回路・ヒューズ)が重要。

 

✅最後に: SIGLENT SDM4065X の簡易な紹介

SDM4065XはSIGLENTの新世代6½桁DMM(デジタル・マルチメータ)です。
高精度で安定した測定が可能で、研究開発、品質管理、校正用途に適しています。

  • 6½桁表示による高分解能測定

  • 基本DC電圧確度:±0.0035%

  • 最大50k回/秒の高速サンプリング

  • DCV、ACV、DCI、ACI、抵抗、周波数、ダイオード、導通測定対応

  • 大型5インチカラーLCDで視認性良好

  • ヒストグラム・トレンドチャート・統計機能・データロギング対応

  • USB / LAN / GPIB(オプション)など豊富な通信インターフェース

  • SCPIコマンド対応で自動計測システムに容易に組み込み可能

 高性能・高機能ながらコストパフォーマンスにも優れた1台です。