ファンクションジェネレータ入門(3)周波数・振幅・オフセットの設定方法

 

■はじめに

ファンクションジェネレータを正しく使いこなすには、出力信号の「周波数」「振幅」「オフセット」という3つの基本パラメータを正しく設定することが不可欠です。これらはすべて出力波形の形状や回路への影響に関わる重要な要素であり、測定対象に応じて適切に調整する必要があります。

今回は、それぞれのパラメータが持つ意味と、設定時に注意すべきポイントを詳しく解説します。

 

■周波数の設定

周波数(Frequency)は、1秒間に繰り返される波形の回数を示し、単位はHz(ヘルツ)で表されます。

・ 正弦波であれば、1周期の長さを決める基本パラメータ
・ 方形波やパルス波では、スイッチング速度や信号周期に相当
・ 三角波やランプ波では、信号の傾斜(スロープ)にも関係

ファンクションジェネレータでは、通常1Hzから数十MHz、上位モデルでは数百MHzまでの範囲で周波数を設定できます。

設定時の注意点:

・ 高周波になるほど波形の立ち上がり/立ち下がりが影響を受けやすくなる
・ オシロスコープと連携する場合、時間軸(Time/div)の調整も必要
・ 対象回路の帯域(周波数特性)を事前に確認してから信号を印加する

特にフィルタ回路やアンプ回路の評価では、周波数をスイープしながら特性を観察する使い方も有効です。

 

■振幅の設定

振幅(Amplitude)は、出力波形の最大の高さを示す値で、通常はピークtoピーク電圧(Vpp)または実効値(Vrms)、ピーク値(Vpk)で指定します。

・ Vpp(ピークtoピーク):波形の上端から下端までの合計電圧幅
・ Vpk(ピーク値):波形の中心から最大点までの電圧
・ Vrms(実効値):交流の平均的なエネルギー量に相当する値

ファンクションジェネレータの設定画面では、Vpp表示がデフォルトであることが多いです。

設定時の注意点:

・ 回路が扱える最大電圧を超えないよう注意(特にICやセンサなど)
・ オシロスコープで観測する際は、適切なスケール(Vertical/div)に調整
・ 高振幅設定時は、信号源の歪みや出力インピーダンスの影響が出やすい

出力端子のインピーダンス(通常は50Ω)に対する負荷との整合を取ることも重要です。

 

■オフセットの設定

オフセット(Offset)は、出力波形の中心位置を直流的に上下させる機能です。信号にDC成分を加えることで、波形全体の位置を調整することができます。

・ たとえば、±1Vの正弦波に+2Vのオフセットを加えると、0~+4Vの信号になる
・ オペアンプ入力やセンサ駆動など、一定の電圧条件が必要な回路に有効
・ PWM波形のレベル合わせや、トランジスタのバイアス条件を整える際にも活用

設定時の注意点:

・ オフセットと振幅を合計した最大電圧が機器の仕様を超えないようにする
・ 高電圧のDC成分は誤動作や破損の原因になる可能性がある
・ オシロスコープのDCカップリング/ACカップリング設定との関係を理解する

オフセットは「便利だが危険」なパラメータとも言え、正確な理解が必要です。

 

■3パラメータの関係と調整のコツ

これら3つのパラメータは互いに影響し合うため、設定の順番やバランスも重要です。

・ まず波形の種類を決める(正弦波・方形波など)
・ 次に目的に応じて周波数を決定
・ 波形の大きさ(振幅)を設定
・ 必要に応じてオフセットを加える

例えば、5V TTLロジックを模擬する場合は、0~5Vの方形波(振幅5V、オフセット+2.5V)といった設定が必要になります。

 

■信号確認のポイント(オシロスコープとの連携)

出力信号が想定通りであるかを確認するには、オシロスコープを用いた波形観測が有効です。

・ 周波数:1周期の長さが設定通りになっているか
・ 振幅:上下の電圧差が指定値に一致しているか
・ オフセット:波形の中心位置がDC的にずれていないか
・ ひずみ:波形が歪んだりノイズが乗っていないか

ファンクションジェネレータとオシロスコープは併用することで、お互いの確認と補正ができます。

 

■まとめ

ファンクションジェネレータの周波数・振幅・オフセットは、すべて波形の正確性と回路の安全性に直結する重要なパラメータです。これらを正しく設定し、必要に応じてオシロスコープで確認することで、安定した信号印加と正確な評価が可能になります。

 


ファンクションジェネレータ入門 全9回 目次案(案)

第1回 ファンクションジェネレータとは?
基本的な役割や波形の種類(正弦波・方形波・三角波など)、用途とオシロスコープとの組み合わせについて解説。

第2回 出力波形の種類と特性
各種波形の用途・特性・注意点(例えば方形波の立ち上がり、パルス幅など)を詳しく説明。

第3回 周波数・振幅・オフセットの設定方法
よく使う3つの基本パラメータについて具体的な操作方法と応用事例を紹介。

第4回 高機能波形:パルス・ランプ・ノイズ・任意波形
基本波形以外に搭載されている特殊波形や、任意波形(Arbitrary Waveform)の活用方法を紹介。

第5回 バースト・スイープ・リニア/ログ制御
時間変化を加えた信号生成の方法と、フィルタやアンプ特性評価への応用例を紹介。

第6回 外部トリガ・シンクロ機能の使い方
外部機器との同期、波形開始タイミング制御など、高度な実験に必要なトリガ設定を解説。

第7回 実験・開発での活用例
電源回路評価、モータ制御、センサテストなど、実際の応用例に基づいた使い方紹介。

第8回 トラブル事例とその対策
信号出力がうまくいかない、波形が歪む、オシロに信号が映らない等の原因と対処法。

第9回 最新技術と今後の展望
多チャネル化、DDS方式、デジタル波形合成、PC連携など、最近の機能動向や選定ポイン