ファンクションジェネレータ入門(5)バースト・スイープ・リニア/ログ制御
■はじめに
ファンクションジェネレータは、単に一定周波数・一定波形の信号を出力するだけでなく、「時間的に変化する信号」も生成できます。その中でも「バースト出力」「スイープ出力」は、電子回路の応答や特性評価において非常に便利な機能です。
本記事では、バーストモード・周波数スイープ・リニア制御・ログ制御といった高機能出力について、その仕組みや使い方、活用例を詳しく解説します。
■バースト出力とは
バースト(Burst)モードとは、指定された回数だけ信号を出力し、その後停止するモードです。単発波形や一定回数だけ繰り返す信号を生成する際に使います。
・ バーストカウント:出力する波形の繰り返し回数を設定可能
・ ゲート制御:外部信号によりバースト開始をトリガ
・ 遅延設定:トリガ後の出力開始時間を調整可能
・ 位相設定:波形の開始点(0°、90°など)を指定できる機種もあり
用途:
・ 回路の立ち上がり・立ち下がりの応答評価
・ スイッチング素子の短周期試験
・ 一時的な信号印加による耐性確認
・ 特定タイミングでの制御信号模擬
オシロスコープと連動して、トリガをかけながら波形観測することで、過渡現象の記録や異常検出に役立ちます。
■スイープ出力とは
スイープ(Sweep)とは、周波数を時間とともに連続的に変化させながら波形を出力するモードです。主にフィルタ、アンプ、共振回路の周波数特性を調べるために使用されます。
・ スタート周波数/ストップ周波数:スイープの開始と終了周波数
・ スイープ時間:変化にかける時間(数ms~数秒)を設定可能
・ 繰り返し設定:1回のみ、連続ループなどの選択が可能
・ 出力波形:正弦波、三角波、ランプ波などが一般的
用途:
・ 帯域特性の確認(例:通過帯域、遮断帯域の可視化)
・ 共振点の探索(例:LC共振回路、アンテナインピーダンス)
・ ゲイン・位相の周波数応答測定
・ VCO、PLL回路の追従性評価
スイープ波形は、オシロスコープやスペクトラムアナライザと併用することで、その効果を最大限に引き出せます。
■リニアスイープとログスイープ
スイープには、2つの主な方式があります。「リニアスイープ」と「ログスイープ」です。
・ リニアスイープ:周波数が等間隔で直線的に変化(例:1MHz→2MHz→3MHz…)
・ ログスイープ:周波数が対数的に変化(例:10Hz→100Hz→1kHz→10kHz…)
ログスイープは、広い周波数範囲を評価したい場合に特に便利です。低周波から高周波まで一貫して滑らかに特性を見ることができます。
比較:
種類 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
リニアスイープ | 周波数が等間隔に増加 | 狭帯域の詳細な評価に適する |
ログスイープ | 周波数が指数的に増加 | 広帯域の傾向把握に適する |
機種によっては、リニア/ログの切り替えに加え、ステップスイープ(段階的変化)も可能なモデルもあります。
■スイープ&バーストの組み合わせ
一部の上位機種では、「スイープ中のバースト出力」や「バースト中にスイープをかける」といった複合的な信号生成も可能です。たとえば、特定の範囲で周波数を変化させながら、一定回数のみ信号を出力する、といった複雑な条件下での試験が可能になります。
・ より現実的な応答試験
・ 複合ノイズ環境での耐性評価
・ 自動測定シーケンスの一部としての活用
これにより、より高度な回路評価や装置試験にも対応できるようになります。
■設定時の注意点
これら機能を活用する際には、以下の点に注意する必要があります。
・ スイープ時間が短すぎると、回路の応答が追従できない可能性がある
・ オシロスコープのトリガ設定を工夫しないと波形が安定しない
・ 周波数帯域外の信号を印加すると、誤動作や破損の原因になる
・ ログスイープは低周波域で変化が遅くなるため、測定に時間がかかる場合がある
実験においては、「信号をかけっぱなし」にするのではなく、「何を確認するために、どのように変化させるのか」を事前に明確にしておくことが成功の鍵となります。
■まとめ
バースト、スイープ、リニア/ログ制御といった出力機能は、ファンクションジェネレータをより柔軟かつ強力な評価ツールへと進化させる重要な機能です。単なる波形生成から一歩踏み出し、「時間軸上の変化を伴う信号生成」を行うことで、電子回路やデバイスの実力をより正確に引き出すことができます。
ファンクションジェネレータ入門 全9回 目次案(案)
第1回 ファンクションジェネレータとは?
基本的な役割や波形の種類(正弦波・方形波・三角波など)、用途とオシロスコープとの組み合わせについて解説。
第2回 出力波形の種類と特性
各種波形の用途・特性・注意点(例えば方形波の立ち上がり、パルス幅など)を詳しく説明。
第3回 周波数・振幅・オフセットの設定方法
よく使う3つの基本パラメータについて具体的な操作方法と応用事例を紹介。
第4回 高機能波形:パルス・ランプ・ノイズ・任意波形
基本波形以外に搭載されている特殊波形や、任意波形(Arbitrary Waveform)の活用方法を紹介。
第5回 バースト・スイープ・リニア/ログ制御
時間変化を加えた信号生成の方法と、フィルタやアンプ特性評価への応用例を紹介。
第6回 外部トリガ・シンクロ機能の使い方
外部機器との同期、波形開始タイミング制御など、高度な実験に必要なトリガ設定を解説。
第7回 実験・開発での活用例
電源回路評価、モータ制御、センサテストなど、実際の応用例に基づいた使い方紹介。
第8回 トラブル事例とその対策
信号出力がうまくいかない、波形が歪む、オシロに信号が映らない等の原因と対処法。
第9回 最新技術と今後の展望
多チャネル化、DDS方式、デジタル波形合成、PC連携など、最近の機能動向や選定ポイン