ファンクションジェネレータ入門(6)外部トリガ・シンクロ機能の使い方

 

■はじめに

ファンクションジェネレータの活用範囲をさらに広げるのが、「外部トリガ」や「シンクロナイゼーション(同期)」機能です。これらは、他の測定器や制御装置との連携や、波形の出力タイミングを正確に制御したいときに欠かせない機能です。

ここでは、外部トリガとは何か、どのように使うか、シンクロの具体的な事例などを交えて、応用方法を解説します。

 

■トリガとは

トリガとは、ある条件や信号によって動作を「開始する合図」のことです。ファンクションジェネレータでは、波形出力を開始・停止させるためのトリガ入力を受け取ることができます。

・ 外部トリガ:他の装置やセンサからの信号を使って出力タイミングを制御
・ 内部トリガ:ジェネレータ内部で一定周期で自動的にトリガする(通常モード)
・ マニュアルトリガ:ユーザーがボタンやソフトウェアで手動操作

外部トリガ機能を使うことで、波形出力の「タイミング」を精密にコントロールすることが可能になります。

 

■外部トリガの主な用途

外部トリガを使うことで、以下のような場面でより高精度な計測が可能となります。

・ スイッチング素子の動作と同期して信号を出力
・ センサ信号やイベント信号に応じて特定の波形を出力
・ オシロスコープとの波形観測のタイミングを一致させる
・ 複数のファンクションジェネレータを同時動作させる

例えば、マイクロコントローラが出力するパルス信号を外部トリガ入力に接続すれば、そのタイミングに合わせてジェネレータが出力を開始します。

 

■外部トリガ入力の仕様

外部トリガは、ファンクションジェネレータ本体背面または前面にある専用の「Trigger In」端子から入力します。

・ 入力レベル:TTLレベルや±5V程度の電圧で動作するものが多い
・ 立ち上がり/立ち下がり:トリガの判定エッジ(上昇か下降)を選べる
・ アイソレーション:絶縁型の入力を持つモデルもあり、安全性が高い
・ 遅延設定:トリガ受信後、数μs〜msの遅延を設定可能な場合もある

トリガ入力の感度や条件は機種によって異なるため、使用前に仕様を確認することが重要です。

 

■トリガ出力(Trigger Out)

多くのファンクションジェネレータには「トリガ出力(Trigger Out)」端子も備わっています。これは、出力開始や内部イベントに同期したタイミング信号を外部に提供するためのものです。

・ 他の測定器(例:オシロスコープ)のトリガ入力に接続して同期観測
・ 複数のジェネレータに接続し、マスタースレーブ構成で動作制御
・ トリガ信号を使って他の装置(例:パルスカウンタ)を駆動

オシロスコープのトリガ入力と接続すれば、波形が表示されるタイミングが安定し、計測が非常にしやすくなります。

 

■バーストモードとの組み合わせ

外部トリガはバーストモードと非常に相性が良く、以下のような使い方が可能です。

・ 1回のトリガ信号で、指定回数だけ波形を出力し停止
・ 繰り返しモードにすれば、一定時間おきに信号を出力
・ センサ信号に応じて波形を生成し、応答を観測

このように、出力回数や周期を限定した波形制御が必要な場面で、トリガ機能は大きな力を発揮します。

 

■同期(シンクロナイゼーション)

複数の機器を「同期」させるためには、トリガだけでなく「クロック」や「同期出力」も利用されます。

・ ジェネレータ同士を同期させて、多チャンネル出力を正確に制御
・ 位相を揃えた波形を複数出力する(例:位相差0°の2波形)
・ マスタースレーブ構成により、すべての出力を一括制御

高精度な測定やタイミング制御が必要なアプリケーションでは、この「同期出力」は欠かせない機能です。

 

■設定時の注意点

外部トリガや同期機能を使用する際には、以下の点に留意してください。

・ 接続ケーブルはできるだけ短くし、ノイズの影響を抑える
・ トリガレベルやエッジ選択を間違えると反応しないことがある
・ トリガと信号出力にタイミングずれ(ジッタ)がある場合もある
・ 機器間のGNDが正しく接続されていないと誤動作することがある

外部機器とのインターフェースは慎重に設計・確認する必要があります。

 

■まとめ

外部トリガやシンクロ機能は、ファンクションジェネレータをより高度に活用するための重要な手段です。単独での波形生成にとどまらず、外部制御との連携や多機器同期によって、実験や評価の精度・再現性を大きく高めることが可能になります。

 


ファンクションジェネレータ入門 全9回 目次案(案)

第1回 ファンクションジェネレータとは?
基本的な役割や波形の種類(正弦波・方形波・三角波など)、用途とオシロスコープとの組み合わせについて解説。

第2回 出力波形の種類と特性
各種波形の用途・特性・注意点(例えば方形波の立ち上がり、パルス幅など)を詳しく説明。

第3回 周波数・振幅・オフセットの設定方法
よく使う3つの基本パラメータについて具体的な操作方法と応用事例を紹介。

第4回 高機能波形:パルス・ランプ・ノイズ・任意波形
基本波形以外に搭載されている特殊波形や、任意波形(Arbitrary Waveform)の活用方法を紹介。

第5回 バースト・スイープ・リニア/ログ制御
時間変化を加えた信号生成の方法と、フィルタやアンプ特性評価への応用例を紹介。

第6回 外部トリガ・シンクロ機能の使い方
外部機器との同期、波形開始タイミング制御など、高度な実験に必要なトリガ設定を解説。

第7回 実験・開発での活用例
電源回路評価、モータ制御、センサテストなど、実際の応用例に基づいた使い方紹介。

第8回 トラブル事例とその対策
信号出力がうまくいかない、波形が歪む、オシロに信号が映らない等の原因と対処法。

第9回 最新技術と今後の展望
多チャネル化、DDS方式、デジタル波形合成、PC連携など、最近の機能動向や選定ポイン