
MOSFETのしきい値電圧(Vth)をSMU(Source Measurement Unit)を用いて測定する方法は、MOSFETの特性を正確に評価する上で非常に重要です。SMUは電圧を印加しつつ電流を測定できる高機能な測定器であり、MOSFETの評価に広く用いられます。
以下に、SMUを用いたVth測定の一般的な手順と、Vthを決定する方法をいくつか紹介します。
1. 測定器のセットアップ
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SMUの接続: 一般的に、2つのSMUを使用します。
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SMU1: ゲート(G)とソース(S)の間に接続し、ゲート電圧()を印加します。
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SMU2: ドレイン(D)とソース(S)の間に接続し、ドレイン電圧()を印加し、ドレイン電流()を測定します。
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ソース(S): 通常、グラウンドに接続します。
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測定条件の設定:
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の設定: ドレイン電圧()は、MOSFETが線形領域で動作するよう、比較的低い一定値に設定します(例:0.1V)。
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の掃引: ゲート電圧()は、MOSFETがオフ状態からオン状態になるまで、徐々に増加させます(例:-1Vから5Vまで、0.01Vステップ)。
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電流測定: の各ステップで、ドレイン電流()を測定します。
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2. Vthの算出方法
測定によって得られたと$IDのデータから、ID - VGSVthを決定するには、いくつかの方法があります。
a) 接線法(Linear Extrapolation Method)
これは最も一般的に用いられる方法です。
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ID - VGS曲線の立ち上がり部分(飽和領域)の最も線形な部分に接線を引きます。
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この接線がVGS軸(ID=0)と交差する点の電圧をVthとします。
b) 定電流法(Constant Current Method)
この方法は、特にデータシートに記載されているVthの定義としてよく使用されます。
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あらかじめ特定のドレイン電流()をVthの定義として定めます(例:)。
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この規定された電流値に達したときのVGSVthとします。
c) 第二微分法(Second Derivative Method)
この方法は、より高い精度でVthを決定したい場合に用いられます。
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ID - VGS曲線の第二次微分()を計算します。
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第二次微分が最大値をとるときのVGSVthとします。
3. その他の考慮事項
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パルス測定: 高出力デバイスでは、自己発熱による特性変化を避けるため、短時間のパルス電圧を印加して測定することがあります。多くのSMUはパルス測定機能を備えています。
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ヒステリシス: 測定前に特定のパルスを印加することで、過去のバイアス履歴による$Vthの変動(ヒステリシス)を抑制することが推奨される場合があります。
SMUは、これらの測定を自動化するためのプログラム機能や、取得したデータを解析・表示するための専用ソフトウェアと組み合わせて使用することで、効率的かつ高精度なMOSFETの特性評価を実現します。