
MOSFETのオン抵抗()をSMU(Source-Measure Unit)で測定する方法について解説します。
オン抵抗()とは
オン抵抗は、MOSFETがオン状態にあるときのドレインとソース間の抵抗です。
スイッチング損失を決定する重要なパラメータであり、通常、データシートに特定のゲート-ソース間電圧(VGS)とドレイン電流(ID)の条件下で規定されています。
SMUとは
SMUは、電圧源と電流源、電圧計と電流計の機能を1つの機器に統合したものです。
これにより、デバイスに電圧を印加しながら電流を測定したり、電流を印加しながら電圧を測定したりといった、様々な特性評価を正確かつ効率的に行うことができます。
測定方法の基本
MOSFETのオン抵抗を測定するには、以下の手順が一般的です。
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ゲートに電圧を印加してMOSFETをオン状態にする
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MOSFETのデータシートに記載されている規定の(ゲート-ソース間電圧)を、1つ目のSMUを使用してゲートとソース間に印加します。
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この電圧は、MOSFETが完全に飽和し、抵抗値が最小となるように、閾値電圧()よりも十分に高く設定する必要があります。
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ドレインに電流を流す
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2つ目のSMUを使用して、ドレインとソース間に規定の(ドレイン電流)を流します。
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このとき、SMUは電流源として機能します。
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ドレイン-ソース間の電圧を測定する
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2つ目のSMUは、電流を流しながら同時にドレインとソース間の電圧降下()を測定します。
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オン抵抗を計算する
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オームの法則()に基づいて、測定された$V_{DS}$と$I_D$からオン抵抗を計算します。
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重要なポイント
1. 4端子測定(ケルビン接続)の利用
低抵抗を正確に測定する場合、配線や接触抵抗の影響を排除することが非常に重要です。SMUの多くは、この問題を解決するために4端子測定(ケルビン接続)をサポートしています。
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2端子測定: 電流を流すリード線と電圧を測定するリード線が同じものです。この場合、配線抵抗や接触抵抗による電圧降下が測定値に含まれてしまい、誤差の原因となります。
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4端子測定: 電流を供給する「フォース」端子と、電圧を測定する「センス」端子を別々に接続します。センス端子にはほとんど電流が流れないため、配線や接触抵抗による電圧降下は無視でき、デバイス両端の真の電圧を測定することができます。
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MOSFETのオン抵抗測定では、ドレインとソースの端子にそれぞれフォース端子とセンス端子をできるだけデバイスの近くに接続することで、高精度な測定が可能になります。
2. パルス測定の検討
高電流が流れるパワーMOSFETの場合、DCで長時間電流を流すと、自己発熱によってオン抵抗が増加してしまうことがあります。この熱による影響を最小限に抑えるため、ごく短いパルス状の電流を印加して測定することが一般的です。
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SMUの多くは、このパルス測定機能を備えており、短時間(例:100μs)のパルスを印加して、その間のVDSとIDを測定することができます。
3. 複数のSMUの利用
MOSFETは3端子デバイス(ゲート、ドレイン、ソース)であるため、通常は2つのSMUを使用します。
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SMU1: ゲート-ソース間にVGSを印加します。
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SMU2: ドレイン-ソース間にを供給し、VDSを測定します。
4. I-Vカーブからの算出
オン抵抗は、ドレイン-ソース間電圧()とドレイン電流()の関係を示すI-Vカーブから算出することもできます。
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特定のVGSを印加した状態で、VDSを0Vから少しずつ掃引し、を測定します。
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得られたグラフの原点付近(線形領域)の傾きからオン抵抗を求めることができます。
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RDS(on)は、特定のIDにおけるVDSとIDの比として定義されることが多いため、単一の点ではなく、複数の点で測定して平均値を取ることもあります。
SMUを使用することで、これらの測定プロセスを自動化し、正確かつ効率的にMOSFETのオン抵抗を評価することが可能です。