
半導体デバイスにおける「ブレークダウン」を、SMU(Source Measure Unit)を使用して測定・評価する方法について。
SMUは、電圧源、電流源、デジタルマルチメーター(DMM)、および電子負荷の機能を1つの機器に統合した多機能測定器です。このため、半導体デバイスのブレークダウン電圧を測定するのに非常に適しています。
ブレークダウンの概要
半導体デバイス(ダイオード、トランジスタなど)に逆バイアス電圧を印加していくと、ある電圧を超えた時点で急激に電流が流れ始めます。この現象を「ブレークダウン」といい、このときの電圧を「ブレークダウン電圧」と呼びます。ブレークダウンには主に以下の2種類があります。
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ツェナー降伏(Zener breakdown): 高濃度に不純物がドープされた接合部で発生します。強い電界によって電子がバンドから直接トンネル効果で引き抜かれることで生じます。比較的低い電圧で発生します。
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アバランシェ降伏(Avalanche breakdown): 低濃度に不純物がドープされた接合部で発生します。強い電界によって加速されたキャリアが他の原子に衝突し、新たなキャリアを叩き出して連鎖的に電流が増加することで生じます。比較的高い電圧で発生します。
SMUによるブレークダウン測定
SMUは、以下の機能を利用してブレークダウン電圧を正確に測定します。
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高精度な電圧/電流のソース機能:
SMUは、非常に小さなステップで電圧を印加し、同時に流れる電流を精密に測定することができます。これにより、ブレークダウンが始まるわずかな変化も見逃さずに捉えることができます。
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スイープ機能:
SMUは、設定された電圧範囲を自動で段階的に増加させる「電圧スイープ」を実行できます。これにより、デバイスのI-V(電流-電圧)特性曲線を自動的に描画し、ブレークダウン電圧を視覚的に確認できます。
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コンプライアンス(電流制限)機能:
ブレークダウンが始まると、電流が急激に増加します。SMUには、デバイスを保護するために、流れる電流の上限を設定する「コンプライアンス機能」が備わっています。これにより、ブレークダウンを測定しながらも、過電流によるデバイスの破壊を防ぐことができます。
測定の具体的な手順
一般的なブレークダウン電圧の測定は、以下のように行われます。
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SMUの設定: * 電圧ソースモードを選択し、測定したい電圧範囲を設定します。
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コンプライアンス(電流制限)値を、デバイスが破壊されない程度の値に設定します。(例:数mA~10mA)
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ステップ数や測定遅延時間などを設定し、高精度な測定ができるように調整します。
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デバイスの接続: * 測定したいデバイス(ダイオードなど)をSMUに接続します。ダイオードの場合、逆バイアスをかけるように接続します。
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測定の実行: * SMUを起動し、電圧スイープを実行します。
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SMUは、設定された電圧ステップで電圧を印加し、その都度流れる電流を測定します。
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結果の解析: * 測定データ(電圧と電流のペア)をI-V曲線としてプロットします。
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I-V曲線において、電流が急激に増加し始める点を特定し、そのときの電圧をブレークダウン電圧と判断します。
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ブレークダウン電圧は、特定の電流値(例:1mA)に達したときの電圧として定義されることもあります。
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SMUは、このようにして半導体デバイスのブレークダウン電圧やリーク電流などの重要な電気的特性を、安全かつ高精度に評価するための不可欠なツールとなっています。