
「5G NTN衛星」とは、5G (第5世代移動通信システム) の通信網を宇宙や成層圏にまで拡張するための衛星🛰️です。
NTNは「Non-Terrestrial Network (非地上系ネットワーク)」の略で、文字通り、地上の基地局だけに頼らない通信ネットワークを指します。これにより、地上のネットワークが届かない場所(海、山間部、砂漠など)でも5Gのサービスを利用できるようになります。
仕組みと役割
NTNは、地上のネットワークを補完し、地球全体を通信エリアでカバーすることを目的としています。そのために、主に3種類の非地上系プラットフォームが使われます。
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衛星: 地球を周回する通信衛星。
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GEO衛星 (静止軌道): 高度約36,000kmにあり、地球の自転と同じ速度で動くため、地上から見ると常に同じ場所にあるように見えます。広い範囲をカバーできますが、通信遅延が大きいのが課題です。
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LEO衛星 (低軌道): 高度数百km~2,000kmの低い軌道を周回します。地上に近いため通信遅延が小さく、高速通信に適していますが、カバー範囲が狭いため、多数の衛星を組み合わせて**「コンステレーション」**と呼ばれるネットワークを構築する必要があります。
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HAPS (High-Altitude Platform Station): 成層圏を飛行する無人航空機や気球です。衛星よりも地上に近く、低遅延での通信が可能です。
このNTN衛星は、地上と直接通信する中継局としての役割を果たしたり、地上基地局の機能の一部を搭載したりすることで、スマートフォンやIoTデバイスと直接通信できるようになります。
期待されるメリットとユースケース
5G NTN衛星によって、以下のような新しい可能性が開けます。
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カバレッジの穴を埋める: 地上ネットワークが未整備な地域や、電波の届かない場所でも通信が可能になります。これにより、海上の船舶や航空機、山間部の探査活動など、これまで通信が難しかった場所でのサービスが実現します。
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災害時のバックアップ: 地震や津波などで地上の通信インフラが被害を受けても、衛星経由で通信を確保できます。災害時の安否確認や救援活動に不可欠な通信手段となります。
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IoTの普及: 地上での設置が難しい場所にあるセンサーやIoTデバイスを衛星で接続することで、農業、林業、物流、環境モニタリングなど、さまざまな分野でIoT活用が加速します。
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自動運転: 自動車がどこにいても通信できることで、V2X (Vehicle-to-Everything) 通信や自動運転技術の発展に貢献します。
5G NTN衛星は、地上と宇宙のネットワークを統合し、地球上のあらゆる場所で途切れることのない通信を提供する、将来の通信インフラにとって不可欠な要素です。
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