
メタマテリアル完全吸収体(MMPA)は、特定の波長の電磁波をほぼ100%吸収するように設計された人工的な物質です。これは、自然界には存在しない特定の電磁特性を、波長よりも小さい微細な構造を周期的に配置することで実現します。
仕組み(原理)
MMPAの基本的な構造は、一般的に3層からなります。
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メタマテリアル層(表面): 特定の波長の電磁波に共鳴するように設計された微細な金属パターン(例: C字型、円形、正方形など)が配置されています。この層で、入射した電磁波は電気共鳴や磁気共鳴を引き起こします。
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誘電体層(中間): メタマテリアル層と下層の金属板を隔てる層で、この層の厚さや材質によって吸収特性を調整します。
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金属板(底面): 電磁波を反射させ、透過を完全に防ぐ役割を果たします。これにより、吸収された電磁波がMMPAの内部で閉じ込められます。
この3層構造により、インピーダンス整合と電磁共鳴という2つの主要な現象が同時に起こります。
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インピーダンス整合: MMPAの表面インピーダンスが、真空中(または空気中)のインピーダンスに一致するように設計されます。これにより、電磁波の反射が最小限に抑えられ、光がMMPAの内部に入りやすくなります。
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電磁共鳴: 入射した電磁波が、メタマテリアル層の微細構造と誘電体層との間で特定の周波数で共鳴し、エネルギーを効果的に吸収します。
これらの現象が組み合わさることで、入射した電磁波は反射も透過もせず、ほぼ全てがMMPAの内部で熱エネルギーとして散逸し、完全な吸収が実現します。
応用例
MMPAは、その優れた吸収特性から様々な分野で応用が期待されています。
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センサー: 特定の物質が付着することで共鳴周波数が変化する性質を利用し、高感度な化学センサーやバイオセンサーとして使用されます。
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太陽電池: 太陽光を効率的に吸収し、熱や電気に変換する太陽光吸収体として利用することで、変換効率の向上が期待されます。
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熱放射体/サーマルエミッター: 吸収特性と熱放射特性の相関関係(キルヒホッフの法則)を利用し、特定の波長の熱を効率的に放射するデバイスとして応用されます。
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ステルス技術: 軍事分野において、レーダー波や赤外線を吸収することで、物体の検知を困難にする光学ステルスへの応用が研究されています。
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電磁波シールド: 電子機器から発生する不要な電磁波を吸収し、ノイズを抑制する電磁シールド材としての利用も考えられています。
T&MコーポレーションではNEXTEM社と協調してSIGLENT社、Ceyear社の電子計測器(VNA等)による電波吸収性の評価のシステム提案を行っております。お気軽にお問い合わせフォームよりご相談くださいませ。
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