
PAM-4とは何か?
PAM-4 (4値パルス振幅変調) は、デジタル信号の伝送方式の一つで、特に高速通信で使われています。従来のNRZ (Non-Return-to-Zero) 方式が2つの電圧レベル(0と1)で1ビットの情報を伝送するのに対し、PAM-4は4つの電圧レベル(00, 01, 10, 11)を使って1つのパルスで2ビットの情報を伝送します。
これにより、同じ信号周波数(ボーレート)でもNRZ方式の2倍のデータを送れるため、超高速化が求められるデータセンターや通信インフラで広く採用されています。
仕組み
PAM-4の主な目的は、帯域幅を増やさずにデータ伝送速度を向上させることです。通信速度を上げるには、信号の周波数を高くするか、一度に送る情報量を増やすかの2つの方法があります。周波数を上げると伝送路での信号損失が大きくなるため、後者の「一度に送る情報量を増やす」アプローチが取られました。
PAM-4は、振幅(電圧レベル)を4段階にすることでこれを実現します。これにより、同じ時間内にNRZの2倍のビットを伝送できます。
メリットとデメリット
メリット
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伝送速度の向上: 同じ信号周波数でNRZの2倍のデータ伝送が可能です。これにより、既存の帯域幅を有効活用し、高速化を実現できます。
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周波数帯域の低減: 同じデータレートで比較すると、PAM-4はNRZの半分の周波数で伝送できます。これにより、信号の伝送損失が減少し、デバイスの消費電力も抑えられます。
デメリット
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ノイズに弱い: 4つの電圧レベル間の間隔が狭いため、ノイズや信号の劣化(ジッタ、クロストークなど)の影響を受けやすくなります。これにより、信号の品質を維持するための設計や評価が複雑になります。
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実装の複雑さ: ノイズ耐性の低さを補うため、エラー訂正技術(FEC)や信号補正技術(イコライゼーション)が必須となり、回路設計やテストが複雑でコストも高くなります。
224G-PAM-4インターフェースの課題
224G-PAM-4インターフェースとは、224 Gbpsという高速なデータ伝送速度を実現するために、PAM-4(4値パルス振幅変調)という変調方式を採用したインターフェースのことです。これは、データセンターやAI、機械学習といった大容量のデータを扱う分野で、次世代の接続技術として注目されています。
224G-PAM-4のような超高速インターフェースでは、物理的な設計が非常に重要になります。インターフェースの性能を最大限に引き出すためには、以下の課題をクリアする必要があります。
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シグナルインテグリティの確保: 高周波での信号の劣化、クロストーク(隣接する信号線からの干渉)、反射など、信号品質を保つための設計が不可欠です。コネクタ、ケーブル、PCB(プリント基板)の設計すべてにおいて、厳密なインピーダンス制御が求められます。
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熱管理: 超高速でのデータ伝送に伴い、チップやコネクタから発生する熱が増大します。適切な放熱設計がなければ、性能の低下や故障につながる可能性があります。
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システムアーキテクチャ: 224G-PAM-4の性能を活かすためには、チップI/O、パッケージ、PCB、コネクタ、ケーブルといったシステム全体の構成要素を、この新しいテクノロジーに最適化する必要があります。単純な部品の置き換えでは性能を十分に引き出せないことが多いです。
224G-PAM-4インターフェースの設計・検証には、高速デジタル信号を正確に測定・解析するための専用機器が必要です。特に、以下のような測定器が不可欠となります。
機器の種類
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高性能オシロスコープ: 224 Gbpsという高速な信号を正確に捉えるためには、非常に高い帯域幅(56 GHz以上)とサンプリングレートを持つオシロスコープが必要です。これを使って、信号の品質やアイパターンを視覚的に確認します。
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BERT(ビットエラーレシーバーテスター): 信号のビットエラーレート(BER)を測定する機器です。224G-PAM-4のような高速インターフェースでは、非常に低いBERが要求されるため、正確なBER測定は設計検証に不可欠です。
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ベクトルネットワークアナライザ(VNA): 高周波での信号伝送特性を評価するために使用します。特に、挿入損失(Insertion Loss)や反射損失(Return Loss)など、インターフェースの物理的な特性を測定します。
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信号発生器: 意図的にエラーを注入したり、特定のテストパターンを生成したりするために使われます。これにより、インターフェースがさまざまな条件下でどのように動作するかを検証できます。
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