SIGLENT (シグレント)スペクトラム・アナライザ SSA5000Aシリーズ

2025年7月に更新された「ISM機器のエミッション — CISPR 11の概要」は、工業・科学・医療用電気機器 (ISM機器) から発生する電磁妨害波(エミッション)に関する国際規格である CISPR 11:2024 (第7版) の内容を反映したものです。この規格は、機器が意図的に発生させる高周波エネルギーが、他の無線機器などに悪影響を与えないようにするための限度値と測定方法を定めています。

この更新には、主に以下の重要な変更点が含まれています。


 

1. グループ1機器に対する放射エミッション限度値の導入

 

最大内部周波数が108MHzを超えるグループ1機器について、1GHz以上の周波数帯における放射エミッションの限度値が新たに規定されました。これにより、より高い周波数帯での電磁環境両立性(EMC)が確保されます。

 

2. 無線通信機能を有する機器への要求事項の追加

 

無線送受信機能を内蔵した機器(ホスト機器)に関する要求事項が追加されました。これは、Wi-FiやBluetoothなど、無線通信機能を持つISM機器が増えている現状に対応するものです。

 

3. ロボットに関する定義の追加

 

産業用ロボットなど、さまざまな種類のロボットに関する定義が導入されました。これにより、ロボットに特化したEMC要件を適用することが可能になります。

 

4. 伝導エミッションに関する要求事項の追加

 

有線ネットワークポートにおける伝導エミッションの限度値が、汎用エミッション規格の要求事項と整合されるように導入されました。


 

CISPR 11の機器分類

 

CISPR 11では、ISM機器を以下の2つのグループと、さらにその中のクラスに分類しています。

  • グループ1: 物質の処理、検査・分析、電磁エネルギーの伝送を目的として高周波エネルギーを意図的に発生・使用しない機器。例:事務機器、家電製品。

  • グループ2: 物質の処理、検査・分析、電磁エネルギーの伝送を目的として、9kHzから400GHzの周波数で高周波エネルギーを意図的に発生・使用する機器。例:高周波誘導加熱装置、電子レンジ、医療用MRI装置。

これらのグループは、さらに以下のクラスに分かれます。

  • クラスA: 工業環境などでの使用が想定される機器。住宅環境での使用には適さない場合がある。

  • クラスB: 住宅環境を含むすべての場所での使用が想定される機器。クラスAよりも厳しいエミッション限度値が設定されています。

この規格の最新版である CISPR 11:2024 は、2015年版を技術的に改訂したものであり、欧州規格 EN 55011:2024 にも対応しています。これらの変更は、技術の進歩に伴う新たな電波干渉リスクに対応し、より安全な電磁環境を維持することを目的としています。

 

詳細情報:

「ISM機器のエミッション — CISPR 11の概要」=2025年7月更新= 株式会社 e・オータマ https://www.e-ohtama.jp

https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/cispr11-explained.pdf

 

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