
デジタル変調方式における変調帯域幅は、主に以下の2つの要素で決まります。
シンボルレート (変調速度)
シンボルレート()は、1秒間に送信するシンボルの数を指します。シンボルとは、複数のビットをひとまとめにして表現する信号の単位です。例えば、QPSK変調では1シンボルで2ビット、16QAM変調では1シンボルで4ビットの情報を伝送します。
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シンボルレートが高くなると、1秒間に多くの情報を送れるため、必要な帯域幅は広くなります。
ロールオフ率
ロールオフ率()は、変調信号の帯域外に漏れ出すスペクトルの広がりを制御するフィルタの特性を表す指標です。0から1までの値を取り、通常は0.2~0.5程度の値が使われます。
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ロールオフ率が大きくなると、スペクトルの端が緩やかになり、必要な帯域幅は広くなります。
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ロールオフ率が小さいと、スペクトルの端が急になり、帯域幅は狭くなりますが、フィルタの実現が難しくなり、波形ひずみや符号間干渉が発生しやすくなります。
変調帯域幅の計算式
これらの要素から、デジタル変調におけるナイキスト帯域幅(最小限必要な帯域幅)は、以下の式で近似的に表すことができます。
ここで、 は変調帯域幅、 はシンボルレート、 はロールオフ率です。この式が示すように、変調帯域幅はシンボルレートとロールオフ率の積によって決まります。
デジタル変調方式における変調帯域幅は、主にシンボルレート(またはボーレート)と変調方式の2つによって決まります。これらは密接に関連しています。
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シンボルレート: 1秒間に何個のシンボルを送信するかを示す値です。シンボルとは、特定のビットパターンを表現する波形単位のことです。
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変調方式: 各シンボルに何ビットの情報を割り当てるかを決定します。例えば、QPSKは1シンボルあたり2ビット、16QAMは4ビット、256QAMは8ビットの情報を伝送できます。
多値変調方式における変調帯域幅
256QAMのような多値変調方式では、1シンボルあたりに多くの情報を詰め込めるため、同じ情報伝送速度(ビットレート)を実現するのに必要なシンボルレートを低く抑えることができます。これは、結果として変調帯域幅を狭くすることができます。
変調帯域幅は、以下の式で近似できます。
ここで、ナイキストの定理(Nyquist's theorem)が重要になります。ナイキストの定理によると、理想的な条件下では、シンボルレートの信号を送信するために必要な最小帯域幅はとなります。しかし、実際にはフィルタの特性やロールオフ率の影響を受けるため、通常はシンボルレートにほぼ等しい帯域幅が必要とされます。
具体例
256QAMでは、1つのシンボルで8ビットの情報(28=256)を伝送します。
仮に、1秒間に100万ビット(1Mbps)の情報を送信したい場合を考えます。
この場合、シンボルレートは125kボーとなり、必要な変調帯域幅は概ね125kHzとなります。
変調方式 | 1シンボルあたりのビット数 | 1Mbpsを送信するのに必要なシンボルレート | 必要な帯域幅 |
QPSK | 2ビット | 500kシンボル/秒 | 約500kHz |
16QAM | 4ビット | 250kシンボル/秒 | 約250kHz |
256QAM | 8ビット | 125kシンボル/秒 | 約125kHz |
このように、256QAMはQPSKや16QAMよりもスペクトル効率(単位帯域幅あたりの伝送ビット数)が高く、同じ情報量をより狭い帯域で伝送できるため、周波数資源を有効活用できます。これが、高速通信が求められるモバイル通信などで広く採用されている理由です。
デジタル変調の帯域幅は、主にシンボルレートと変調方式で決まります。
変調帯域幅を決める要因
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シンボルレート(Symbol Rate) : 1秒間に送るシンボル(信号の単位)の数で、**ボーレート(Baud Rate)**とも呼ばれます。シンボルレートが高いほど、より多くの情報を高速に送れますが、より広い帯域幅が必要です。
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変調方式(Modulation Scheme): 1つのシンボルでどれだけのビット(情報量)を運ぶかを決めます。たとえば、QPSKでは1シンボルあたり2ビット、16QAMでは4ビット、64QAMでは6ビット、256QAMでは8ビットを伝送します。同じデータ量を送る場合、多値化された変調方式(QAMなど)を使うと、必要なシンボルレートを下げられるため、帯域幅を効率的に利用できます。
LTEと5Gの場合
LTEと5GはどちらもOFDM(直交周波数分割多重)という変調方式を使用しており、これは帯域を複数の狭いサブキャリアに分割して、それぞれにデータを乗せる方式です。
LTE
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チャネル帯域幅: 1.4MHzから最大20MHz。
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サブキャリア間隔: 15kHzで固定。
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特徴: LTE-Advancedでは、複数のチャネルを束ねるキャリアアグリゲーション(CA)によって、最大100MHzの広帯域化を実現しています。
5G
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チャネル帯域幅:
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Sub-6帯 (FR1): 最大100MHz。
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ミリ波帯 (FR2): 最大400MHz。
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サブキャリア間隔:
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Sub-6帯: 15kHz、30kHz、60kHz。
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ミリ波帯: 60kHz、120kHz。
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特徴:
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広帯域化: ミリ波帯では、LTEよりはるかに広い帯域幅を使用します。これにより、超高速通信が可能になります。
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柔軟なサブキャリア間隔: サブキャリア間隔を可変にすることで、さまざまな周波数帯や用途に柔軟に対応できます。間隔が広いほど、遅延を抑えたり高速移動中でも安定した通信が可能です。
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