SIGLENT(シグレント)SDS5000X HDシリーズ デジタル・オシロスコープ

酸化ガリウム()は、化学式で表される無機化合物で、ワイドギャップ半導体の一種です。特に、シリコン(Si)や炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)に続く「第4世代半導体材料」として注目されています。


 

特徴と用途

 

酸化ガリウムは、その大きなバンドギャップ(約4.5~4.9eV)と高い絶縁破壊電界強度(6~8 MV/cm)という優れた特性を持っています。これにより、高耐圧・低損失を実現できるため、次世代のパワーデバイスへの応用が期待されています。

主な用途には、以下のようなものが挙げられます。

  • パワーデバイス:送配電、鉄道、電気自動車、家電製品など、電力変換や制御を行う分野。

  • 高温・放射線環境下でのデバイス:宇宙、原子力発電、地下資源探査など、過酷な環境での使用。

  • LED基板:青色発光ダイオード(LED)の基板材料としての研究も進められています。

 

結晶構造

 

酸化ガリウムには、α、β、γ、δ、εの5つの異なる結晶構造が存在します。このうち、**β型(単斜晶)**が最も安定した構造であり、パワーデバイスの研究開発は主にこのβ型を中心に進められています。

 

従来の半導体との比較

 

従来の半導体と比較して、酸化ガリウムには以下のような利点と課題があります。

  • 利点

    • 安価な製造コスト:SiCやGaNと異なり、融液成長法によって高品質な大口径ウェーハを安価に製造できる可能性があります。

    • 高い耐圧・低損失:SiCやGaNよりも優れた特性を持つため、さらなる高効率化が期待されます。

  • 課題

    • 低い熱伝導率:SiCやダイヤモンドに比べて熱伝導率が低いため、大電流を流す際の放熱対策が重要となります。

    • p型半導体の作製困難:現在、n型伝導しか示さないため、pn接合を利用したデバイス構造の形成が難しいという課題があります。このため、他の半導体材料との組み合わせによる研究開発が進められています。

参考資料:産業技術総合研究所(産総研)が世界で初めて6インチβ型酸化ガリウム単結晶の作製に成功したことについて説明しています。

「世界初、垂直ブリッジマン法による6インチβ型酸化ガリウム単結晶の作製に成功」

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2023/pr20231225/pr20231225.html

 

 

産業技術総合研究所(産総研)はノベルクリスタルテクノロジー信州大学と共同で、垂直ブリッジマン(VB)法を用いて直径6インチのβ型酸化ガリウム単結晶の作製に世界で初めて成功しました。この成功は、β型酸化ガリウム単結晶の単結晶基板の大口径化と高品質化を可能にし、将来的にはβ-Ga2O3パワーデバイスのコストダウンに貢献すると期待されています。
 
詳細
  • 技術:Vertical Bridgman (VB)法
     
  • 対象:β型酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶
     
  • 成果:世界で初めて直径6インチ(約15cm)の単結晶の作製に成功しました
     
  • 目的:6インチ単結晶基板は、高効率で大型のβ-Ga2O3パワーデバイスの製造に必要な技術です
     
意義と今後の展望
  • コスト削減:
    基板の大口径化と高品質化により、パワーデバイスの製造コストを削減できます
     
  • 次世代パワー半導体:
    自動車の電動化や再生可能エネルギー分野で注目される次世代パワー半導体としてのβ-Ga2O3の普及を加速させる可能性があります
     
  • 研究開発の促進:
    この成功により、関連する研究開発がさらに進展すると考えられます
     
この研究開発は、酸化ガリウムの材料特性を活かし、高効率・高耐圧・高信頼性なパワーエレクトロニクスデバイスの実現に貢献することが期待されています。