
インバータ回路におけるハイサイドとローサイドとは、直流電源から交流に変換する際に電流のON/OFFを切り替えるスイッチ素子(IGBTやMOSFETなど)の配置を示す用語です。
ハイサイド(High-Side)
ハイサイドは、スイッチ素子が電源(直流電源の正極)と負荷(モーターなど)の間に接続されている回路構成を指します。
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特徴:
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スイッチがONになると、電源電圧が直接負荷にかかります。
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スイッチを制御するゲートドライブ回路の基準電位が、負荷側の電位変動によって変化するため、複雑な回路設計が必要になることがあります。
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ローサイド(Low-Side)
ローサイドは、スイッチ素子が負荷(モーターなど)とグランド(GND、直流電源の負極)の間に接続されている回路構成を指します。
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特徴:
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スイッチがONになると、負荷がGNDに接続され、電流が流れます。
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スイッチを制御するゲートドライブ回路の基準電位がGNDに固定されているため、比較的シンプルな回路設計が可能です。
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インバータにおける役割
インバータ回路では、一般的にこれらのハイサイドとローサイドのスイッチがペアで構成され、交互にON/OFFを繰り返すことで、モーターなどの負荷に流れる電流の向きや大きさを制御し、交流を生成します。このスイッチの組み合わせと、そのON/OFFのタイミングを制御するゲートドライブ回路が、インバータの効率的な動作に不可欠です。
インバータのHブリッジ回路は、直流(DC)を交流(AC)に変換する際に使用される電子回路です。回路の形状がアルファベットの「H」に似ていることから、この名前が付けられました。
Hブリッジの構成と動作原理
Hブリッジ回路は、主に4つのスイッチ(通常はトランジスタやIGBT)と、それらを制御する回路で構成されています。 これらのスイッチは2つずつペアになっており、対角線上のスイッチが同時にオンになるように制御されます。
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正の方向への電流の流れ
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スイッチ1とスイッチ4がオンになると、直流電源のプラス側からスイッチ1を通って負荷へ電流が流れ、負荷を通過した後、スイッチ4を通って直流電源のマイナス側に戻ります。これにより、負荷には正の電圧が印加されます。
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負の方向への電流の流れ
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次に、スイッチ1とスイッチ4がオフになり、スイッチ2とスイッチ3がオンになります。これにより、直流電源のプラス側からスイッチ2を通って負荷へ逆向きに電流が流れ、負荷を通過した後、スイッチ3を通って直流電源のマイナス側に戻ります。これにより、負荷には負の電圧が印加されます。
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これらのスイッチのオン・オフを高速で繰り返すことで、負荷には正と負の電圧が交互に印加され、交流波形(矩形波)が生成されます。さらに、パルス幅変調(PWM)という技術を用いることで、この矩形波の幅を調整し、より滑らかな正弦波に近い交流波形を作り出すことができます。
主な用途
Hブリッジ回路は、そのシンプルさと効率性から、さまざまな分野で利用されています。
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太陽光発電システム:太陽電池が生成する直流電力を、家庭用電源の交流電力に変換するパワーコンディショナーに内蔵されています。
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モーター制御:DCモーターの回転方向を制御するために使用されます。Hブリッジを応用することで、モーターにかかる電圧の極性を反転させ、回転方向を簡単に切り替えることができます。
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無停電電源装置(UPS):バッテリーの直流電力を、停電時に使用するための交流電力に変換します。