SIGLENT(シグレント)SDS5000X HDシリーズ デジタル・オシロスコープ

インバータ回路におけるハイサイドローサイドとは、直流電源から交流に変換する際に電流のON/OFFを切り替えるスイッチ素子(IGBTやMOSFETなど)の配置を示す用語です。


 

ハイサイド(High-Side)

 

ハイサイドは、スイッチ素子が電源(直流電源の正極)と負荷(モーターなど)の間に接続されている回路構成を指します。

  • 特徴:

    • スイッチがONになると、電源電圧が直接負荷にかかります。

    • スイッチを制御するゲートドライブ回路の基準電位が、負荷側の電位変動によって変化するため、複雑な回路設計が必要になることがあります。

 

ローサイド(Low-Side)

 

ローサイドは、スイッチ素子が負荷(モーターなど)とグランド(GND、直流電源の負極)の間に接続されている回路構成を指します。

  • 特徴:

    • スイッチがONになると、負荷がGNDに接続され、電流が流れます。

    • スイッチを制御するゲートドライブ回路の基準電位がGNDに固定されているため、比較的シンプルな回路設計が可能です。

 

インバータにおける役割

 

インバータ回路では、一般的にこれらのハイサイドとローサイドのスイッチがペアで構成され、交互にON/OFFを繰り返すことで、モーターなどの負荷に流れる電流の向きや大きさを制御し、交流を生成します。このスイッチの組み合わせと、そのON/OFFのタイミングを制御するゲートドライブ回路が、インバータの効率的な動作に不可欠です。

 

インバータのHブリッジ回路は、直流(DC)を交流(AC)に変換する際に使用される電子回路です。回路の形状がアルファベットの「H」に似ていることから、この名前が付けられました。


 

Hブリッジの構成と動作原理

 

Hブリッジ回路は、主に4つのスイッチ(通常はトランジスタやIGBT)と、それらを制御する回路で構成されています。 これらのスイッチは2つずつペアになっており、対角線上のスイッチが同時にオンになるように制御されます。

  1. 正の方向への電流の流れ

    • スイッチ1とスイッチ4がオンになると、直流電源のプラス側からスイッチ1を通って負荷へ電流が流れ、負荷を通過した後、スイッチ4を通って直流電源のマイナス側に戻ります。これにより、負荷には正の電圧が印加されます。

  2. 負の方向への電流の流れ

    • 次に、スイッチ1とスイッチ4がオフになり、スイッチ2とスイッチ3がオンになります。これにより、直流電源のプラス側からスイッチ2を通って負荷へ逆向きに電流が流れ、負荷を通過した後、スイッチ3を通って直流電源のマイナス側に戻ります。これにより、負荷には負の電圧が印加されます。

これらのスイッチのオン・オフを高速で繰り返すことで、負荷には正と負の電圧が交互に印加され、交流波形(矩形波)が生成されます。さらに、パルス幅変調(PWM)という技術を用いることで、この矩形波の幅を調整し、より滑らかな正弦波に近い交流波形を作り出すことができます。


 

主な用途

 

Hブリッジ回路は、そのシンプルさと効率性から、さまざまな分野で利用されています。

  • 太陽光発電システム:太陽電池が生成する直流電力を、家庭用電源の交流電力に変換するパワーコンディショナーに内蔵されています。

  • モーター制御:DCモーターの回転方向を制御するために使用されます。Hブリッジを応用することで、モーターにかかる電圧の極性を反転させ、回転方向を簡単に切り替えることができます。

  • 無停電電源装置(UPS):バッテリーの直流電力を、停電時に使用するための交流電力に変換します。