SIGLENT (シグレント)スペクトラム・アナライザ SSA5000Aシリーズ

NF (Noise Figure:雑音指数) 測定とは、電子機器やシステムの性能評価において、信号対雑音比 (S/N比) がどれだけ劣化するかを定量的に測るものです。📡 NFの値が低いほど、ノイズの付加が少なく、機器の性能が良いことを示します。


 

雑音指数の定義

 

雑音指数 (NF) は、デバイスの 入力S/N比出力S/N比 で割った値であり、通常デシベル (dB) で表されます。式で表すと以下のようになります。

ここで、

  • は入力におけるS/N比

  • は出力におけるS/N比

デバイスを通過する際、信号とともに内部ノイズが付加されるため、出力のS/N比は必ず入力のS/N比より低くなります。このため、NFの値は必ず1(0dB)以上になります。理想的なノイズのないデバイスであれば、NFは0dBとなります。


 

測定方法

 

NF測定には、主に以下の方法があります。

 

1. Yファクタ法 (ホット/コールド・ソース法)

 

最も一般的な測定方法です。

  1. ノイズソースと呼ばれる、温度の異なる2つのノイズ源(通常はホット状態とコールド状態)を準備します。

  2. 被測定デバイス (DUT) の入力に、まずコールド状態のノイズ源を接続し、そのときの出力ノイズ電力 () を測定します。

  3. 次にホット状態のノイズ源を接続し、そのときの出力ノイズ電力 () を測定します。

  4. この2つの出力電力の比 () を求め、このYファクタと、ノイズソースの過剰雑音比 (ENR) から、DUTのNFを算出します。

 

2. 直接法

 

スペクトラムアナライザやノイズフィギュアアナライザを用いて、DUTの入出力の絶対ノイズ電力を直接測定してNFを計算する方法です。この方法は測定器の性能に依存し、精度を出すには高性能な機器が必要です。

 

3. コールド・ソース法

 

室温のノイズ源のみを使用し、DUTの出力ノイズ電力と利得をそれぞれ測定してNFを計算する方法です。ゲインを別途正確に測定する必要があるため、主にネットワークアナライザが使用されます。

 

 

Siglent SSA5000-NF Noise figure measurement 

SSA5000A スペクトラムアナライザのオプション(SSA5000-NF)によりノイズコム社製ノイズソース(およびNSD28 noise source driver )を用いて雑音指数(Noise figure)が測定可能です。

 

  • 雑音指数モードは、雑音指数、熱雑音、等価雑音温度などを測定するために使用されます。トレースメニューでは、様々な測定結果を選択して表示できます。
  • DUTが周波数変換デバイスの場合、DUTには外部LO信号も必要です。このLO信号が固定されている場合は、手動で設定するか、アナライザで制御して外部LO信号源の出力を制御できます。このLO信号が掃引されている場合は、アナライザで外部LO信号源の周波数を制御することが可能です。

 

 

雑音指数測定における、Thermal Noise, Equivalent Noise Temperatureとは

 

電気回路や通信システムにおける雑音は、信号の品質を低下させる主要な要因です。雑音指数測定は、この雑音を定量的に評価するための重要な手法であり、その理解には熱雑音等価雑音温度の概念が不可欠です。

 

熱雑音 (Thermal Noise)

 

熱雑音とは、抵抗体内の自由電子が周囲の温度に起因して不規則な熱運動をすることで発生する雑音です。 この雑音は、温度が高いほど、また回路の帯域幅が広いほど大きくなります。物質の温度が絶対零度(0 K)でない限り、必ず存在するため、電子機器におけるノイズフロア(雑音の最低レベル)を決定づける根本的な要因となります。この雑音の電力は、以下の式で表されます。

ここで、はボルツマン定数()、は絶対温度(K)、は帯域幅(Hz)です。


 

等価雑音温度 (Equivalent Noise Temperature)

 

等価雑音温度とは、回路やシステムが内部で発生させる雑音を、その入力端に接続された理想的な抵抗体の温度として表したものです。つまり、雑音のない理想的な回路に、この等価雑音温度を持つ抵抗体を接続した際に発生する雑音と、実際の回路が内部で発生させる雑音が等しくなるように定義されます。この概念を用いることで、異なる回路やシステムの雑音性能を、温度という直感的な物理量で比較することができます。


 

雑音指数 (Noise Figure) とその測定

 

雑音指数(NF)は、増幅器などの回路を通過する際に、信号の品質(S/N比)がどれだけ劣化するかを示す指標です。入力S/N比と出力S/N比の比として定義されます。

 
   

この値が小さいほど、信号を増幅する際に内部雑音の付加が少なく、優れた性能を持つ回路といえます。理想的な雑音のない増幅器では、NFは1(デシベル表記で0 dB)となります。

 

雑音指数測定方法

 

雑音指数を測定する代表的な手法には、Yファクタ法があります。

  1. 測定系のセットアップ: 測定対象デバイス(DUT)と、既知のENR(Excess Noise Ratio)を持つノイズソースを用意します。ENRはノイズソースの出力雑音を熱雑音と比較した値です。

  2. コールド状態の測定: ノイズソースをオフにした状態(室温)で、DUTの出力雑音電力を測定します。

  3. ホット状態の測定: ノイズソースをオンにした状態(高温)で、DUTの出力雑音電力を測定します。

  4. Yファクタの算出: ホット状態とコールド状態の出力電力の比(Yファクタ)を算出します。

  5. 雑音指数の計算: YファクタとノイズソースのENR値を用いて、DUTの雑音指数を計算します。

このYファクタ法は、測定器自体の雑音の影響をキャンセルできるため、高精度な測定が可能です。また、スペクトラムアナライザや専用のNFアナライザが用いられます。