SIGLENT (シグレント)スペクトラム・アナライザ SSA5000Aシリーズ

Kuバンドの衛星インターネットにおける1チャンネルあたりの帯域幅と変調方式は、サービスプロバイダや具体的なシステムによって異なりますが、一般的な傾向としては以下が挙げられます。

 

帯域幅

 

Kuバンドの衛星インターネットでは、1チャンネルあたりの帯域幅は通常、27MHz33MHz、または36MHzが一般的です。これは、Kuバンドの衛星トランスポンダーの帯域幅に準拠しています。より広帯域のサービスでは、これらを束ねて利用する場合もあります。


 

変調方式

 

Kuバンドの衛星通信では、効率的なデータ伝送を実現するために、さまざまな変調方式が使用されます。特に、データレートと信号品質のバランスを考慮して選択されます。主な変調方式は以下の通りです。

  • QPSK(Quadrature Phase Shift Keying): 最も一般的に使用される変調方式の一つです。比較的ロバストで、信号が弱くても安定して通信できます。初期のシステムや、高い信頼性が求められる環境でよく用いられます。

  • 8-PSK(8-Phase Shift Keying): QPSKよりも多くの情報を一度に伝送できますが、信号の品質(SNR)がより良い必要があります。より高いデータレートを実現するために使用されます。

  • 16-APSK(16-Amplitude and Phase Shift Keying): 8-PSKよりもさらに高いデータレートを提供します。変調信号の振幅と位相の両方を変化させることで、より多くのビットを伝送します。良好な信号環境下で、効率的なデータ伝送に貢献します。

  • 32-APSK: 16-APSKと同様に、さらに高いデータレートを実現します。非常に良好な信号品質が要求されます。

これらの変調方式は、ACM(Adaptive Coding and Modulation)技術と組み合わせて使用されることが多く、電波状況に応じて最適な変調方式に動的に切り替えることで、通信の安定性と効率を最大化しています。例えば、天候が悪化して信号が弱くなると、高い変調方式(例:32-APSK)から低い変調方式(例:QPSK)に自動的に切り替わり、通信が途絶えるのを防ぎます。

 

Kuバンドは、衛星通信で広く使われる周波数帯域で、Starlinkのようなブロードバンドサービスでも利用されています。Kuバンド(12~18GHz)は、Kaバンド(26.5~40GHz)やVバンド(40~75GHz)と比べて周波数が低いため、雨や雪による通信への影響(降雨減衰)を受けにくいという利点があります。これにより、天候が悪い状況でも比較的安定した通信が可能です。

 

StarlinkとKuバンド

 

Starlinkは主にKuバンドKaバンドの両方を使用しています。

  • ユーザー端末(アンテナ)と衛星間の通信:主にKuバンドを使用します。これは、Kuバンドがアンテナの小型化に適しており、個人ユーザー向けの端末(アンテナ)を開発しやすいからです。

  • 衛星と地上局(ゲートウェイ)間の通信:主にKaバンドを使用します。KaバンドはKuバンドよりも高い周波数帯であるため、より広帯域で高速なデータ通信が可能です。

 

Starlink以外のKuバンド衛星ブロードバンドサービス

 

Starlinkは低軌道(LEO)衛星を活用して低遅延を実現していますが、Kuバンドを使用する他の衛星ブロードバンドサービスも存在します。これらのサービスは、静止軌道(GEO)や中軌道(MEO)の衛星を使用することが多く、それぞれに特徴があります。

  • 静止軌道(GEO)衛星:地上から約36,000km上空に位置し、地球の自転と同じ速度で周回するため、常に同じ地点の上空にとどまります。これにより、少ない数の衛星で広範囲をカバーできますが、通信距離が長いため遅延が大きくなるというデメリットがあります。

    • ViasatHughesNetなどが代表的なサービスです。

  • 中軌道(MEO)衛星:地上から約8,000~20,000kmの上空を周回します。静止軌道衛星よりは遅延が少なく、カバー範囲も広いです。

  • 低軌道(LEO)衛星:地上から数百kmの低高度を周回します。Starlinkのほか、OneWebなどが代表的です。地上からの距離が近いため遅延が非常に小さいのが最大の特長ですが、広範囲をカバーするには非常に多くの衛星が必要となります。

これらのサービスは、それぞれ異なる顧客層をターゲットにしています。Starlinkは主に個人消費者や僻地・農村部のユーザーを対象にしていますが、OneWebなどは企業や政府向けに特化しています。