
「空間伝送型ワイヤレス伝送システム」は、主に空間伝送型ワイヤレス電力伝送(Wireless Power Transfer, WPT)システムを指します。これは、電力をケーブルなしで、電波(マイクロ波)などのエネルギーとして空間を介して送受信する技術です。
空間伝送型ワイヤレス電力伝送(WPT)の概要
1. 仕組み
電力を電波として送り、離れた場所にある機器でそれを受信する仕組みです。
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送電側: 電源からの電力を高周波(マイクロ波など)に変換し、パラボラアンテナやアレーアンテナなどを用いて特定の方向へ電波ビームとして送信します。
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空間伝送: 電力が電波として空間を伝わります。数メートルから数十メートルの距離を伝送可能です。
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受電側: 受電アンテナ(レクテナ)で電波を受信します。レクテナは、受信したマイクロ波エネルギーを**直流電流(DC)**に整流・変換する機能を持っています。
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電力供給: 整流された電力が、センサーやIoTデバイスなどの機器に供給されます。
特に、人体への影響を考慮し、多くの場合、送電側が受電側の位置を特定し、その機器に集中的に電波を送るビームフォーミング技術や、人体の存在を検知すると送電を停止する安全機能が組み込まれています。
2. 特徴とメリット
接触(電磁誘導や磁界共振)型と異なり、比較的距離が離れていても電力伝送が可能なのが最大のメリットです。
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ケーブルレス・電池レス: 電源ケーブルの配線や、電池交換・充電の手間が不要になります。
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設置の自由度向上: 機器のレイアウトや設置場所の制約が減り、特にIoTデバイスの設置を容易にします。
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耐久性の向上: 物理的な接点がないため、水やホコリに強く、クリーンルームや屋外など、過酷な環境での使用にも適しています。
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移動体への給電: 工場の自動搬送ロボット(AGV)やドローンなど、移動しながら電力を供給できます。
3. 主な用途
小型・低電力のデバイスへの継続的な電力供給が必要な分野での活用が期待されています。
分野 | 具体的な用途例 |
スマートファクトリー | 工場内の多数のセンサー、電子棚札(ESL)、監視カメラなどへのワイヤレス給電。 |
ロジスティクス | 倉庫内のIoTデバイスやRFIDタグ、フォークリフトなどへの給電。 |
スマートホーム | ケーブル不要のワイヤレス照明、センサー、リモコンなどへの常時給電。 |
モビリティ | ドローン、ロボット、電動車いすなど、移動体の充電や電力維持。 |
日本国内では、920MHz帯、2.4GHz帯、5.7GHz帯など、特定の周波数帯での実用化に向けた制度整備が進められています。
T&MコーポレーションではNEXTEM社と協調してSIGLENT社/Ceyear社の電子計測器(スペアナ、VSG、VNA)によるWPT関連機器の評価に必要なシステムの提案を行っております。お気軽にお問い合わせフォームよりご相談くださいませ。http://tm-co.co.jp/contact/
関連リンク:
920MHz 帯空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムとは
http://tm-co.co.jp/glossary/920mhz-wpt/
マイクロ波電力伝送の現状と動向
http://tm-co.co.jp/glossary/wpt-2/
ワイヤレス電力伝送 ワイヤレス給電 非接触充電とは
http://tm-co.co.jp/glossary/wpt-3/