リフレクトアレーアンテナ(Reflectarray Antenna)は、従来のパラボラアンテナ(反射鏡アンテナ)の機能と、多数のアンテナ素子を組み合わせたアレーアンテナの機能を融合させた、新しいタイプの平面型アンテナです。
その最大の利点は、平面構造であること、給電損失が少ないこと、そして高利得を実現できることです。
1. 仕組みと基本原理
リフレクトアレーは、主に以下の2つの要素で構成されています。
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一次放射器(フィードアンテナ): 給電部からマイクロ波(電波)を放射し、それをリフレクトアレー面に照射するアンテナ(通常はホーンアンテナなど)です。
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リフレクトアレー面: 平板状の基板上に、パッチアンテナのような微細な反射素子(ユニットセル)が周期的に配列された反射板です。
位相補償の原理
パラボラアンテナが反射鏡の曲面形状によって入射波の位相を揃えるのに対し、リフレクトアレーは反射素子の電気的な特性(形状、サイズ、または回転角など)を個々に調整することで、位相を制御します。
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一次放射器からアレー面上の各素子に到達する電波は、経路長の差により位相がばらつきます。
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各素子は、入射した電波に対して、反射する際の位相遅延(Δϕ)を独自に与えます。
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この(Δϕ)を適切に設計・調整することで、すべての素子からの反射波が所望の放射方向(ビーム方向)において同相になるように制御され、高利得なビームを形成します。
2. 特徴とメリット
| 特徴 | パラボラアンテナとの比較 | メリット |
| 平面構造 | 放物曲面状の反射鏡が不要。 | 薄型、軽量、省スペース。衛星搭載用やビル壁面への設置に適する。 |
| 低損失 | 給電線路による損失がない。 | 電力効率が良い。特に大規模・高周波になるほど優位性が増す。 |
| 製造容易性 | プリント基板(PCB)技術で製造可能。 | 低コストで大量生産が可能。 |
| ビーム走査 | 素子の位相を電気的に変更することで可能(アクティブ型の場合)。 | ビーム方向を柔軟に制御でき、追尾やマルチビーム化が可能。 |
3. 主な用途と技術課題
主な応用分野
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衛星通信: 宇宙で展開する超軽量・高収納率の展開膜構造アンテナとして、人工衛星やキューブサットに搭載されます。
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5G/Beyond 5G: ミリ波帯の通信において、建物の陰などの不感地帯を解消するための方向制御反射板(リフレクトアレイ)として活用されます。
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レーダー・リモートセンシング: 平面構造を利用した車両搭載レーダーなど。
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ワイヤレス電力伝送 (WPT): 電波を集中的に送るための高指向性アンテナとして応用が検討されています。
技術課題
リフレクトアレーの最大の課題は、一般的に狭帯域特性になることです。
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これは、反射素子が共振現象を利用して位相を制御しているため、周波数帯域が狭くなるためです。
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この課題に対しては、パッチ素子を多層構造にしたり、素子形状を複雑化したりすることで、広帯域化を図る研究が進められています。
この動画では、宇宙での利用を見据えた、展開膜構造を用いた超軽量で高収納率なリフレクトアレーアンテナ技術について説明されています。
【セッション6】展開膜構造を用いた超軽量・高収納率なリフレクトアレーアンテナ技術
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