
「導電性反射鏡付きダイポールメタサーフェス」とは、ダイポールアンテナ(または給電素子)と、その背後に配置された導電性反射鏡(グラウンドプレーンなど)の間に、メタサーフェス(人工的な微細構造面)を挟んだ複合的なアンテナ構造のことです。
これは、アンテナの放射特性(指向性、利得、偏波など)を高度に制御するために用いられる、比較的新しい技術です。
📌 構造と各部の役割
このアンテナシステムは、主に以下の3つの要素から構成されています。
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ダイポール(Dipole):
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役割: 電波を放射または受信する一次放射源(フィードアンテナ)として機能します。シンプルな双極子アンテナが使われることが多いです。
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メタサーフェス (Metasurface):
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役割: ダイポールと反射鏡の間に配置される、波の位相や振幅を操作するための人工的な微細構造のシートです。
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メタサーフェスは、特定の形状に設計された共振素子(ダイポールやパッチなど)のアレイで構成されます。これらの素子を調整することで、反射波の位相を空間的に精密に制御できます。
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機能: ダイポールから放射された電波の反射位相を制御し、特定の方向に効率よく電波を集中させたり(高利得化)、波の偏波面を変換したり(円偏波生成など)する役割を担います。
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導電性反射鏡 (Conductive Reflector):
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役割: メタサーフェスの背後に配置される金属板などの導電性の面です。
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機能: アンテナから放射された電波を反射し、アンテナの指向性を単一方向に集中させるとともに、後方への電波漏れを防ぎます。
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💡 特徴と応用
1. 高度な波面制御
メタサーフェスを使用することで、従来のアンテナでは難しかった反射波の位相を非常に自由に設計できます。これにより、鏡のように正反射させるだけでなく、特定の角度に異常反射させたり、ビームを絞ったりすることが可能になります。
2. 高利得化と低背化
導電性反射鏡とメタサーフェスの組み合わせは、電波を効率よく前方に反射・集中させるため、アンテナの利得(ゲイン)を向上させます。また、従来のパラボラアンテナなどと比べてアンテナ全体の高さを低く抑えられる(ロープロファイル化)ため、小型化が求められる通信機器に適しています。
3. 多機能化 (再構成可能アンテナ)
メタサーフェスの素子にPINダイオードなどの電気的スイッチを組み込むことで、アンテナの特性を動的に変更する「再構成可能(Reconfigurable)アンテナ」として利用できます。
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偏波切替: 線形偏波(リニア)と円偏波(サーキュラー)を切り替える。
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ビームステアリング: ビームの向きを電子的に制御する(フェーズドアレイアンテナに似た機能)。
4. 主な応用分野
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5G/Beyond 5G通信: 特にミリ波帯(高周波数帯)において、高利得・高効率が求められるモバイル端末や基地局での利用。
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衛星通信: 高い指向性が求められるアプリケーション。
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レーダー: 高精度なビーム制御が必要な分野。
T&MコーポレーションではNEXTEM社と協調してSIGLENT社/Ceyear社の電子計測器(スペアナ、VSG、VNA)によるアンテナの評価に必要なシステムの提案を行っております。お気軽にお問い合わせフォームよりご相談くださいませ。http://tm-co.co.jp/contact/