Ceyear社 ネットワークスペクトラムアナライザ 型式:3657A/B/AM/BM/BS (9kHz/100kHz~4.5GHz/9GHz )

直交二偏波密結合ダイポールアレーアンテナは、英語で Dual-Polarized Tightly Coupled Dipole Array (DP-TCDA) と呼ばれることが多く、超広帯域性広角走査能力を両立させるために設計された高性能なアンテナアレイです。


 

💡 概要と基本原理

 

 

1. 密結合アレー (Tightly Coupled Array: TCA)

 

通常のアンテナアレイは、素子間隔を約半波長()程度開けていますが、TCAは素子間隔をそれよりも極めて密未満)に配置します。これにより、隣接する素子間で強い電磁界結合(密結合)が発生します。

  • 超広帯域化: この密結合が、アレイ全体の入力インピーダンスを広い周波数帯域にわたって安定させ、特に低周波数側で帯域幅を劇的に拡大します。

  • 導波管モードの利用: アレイをグランドプレーン(接地板)から少し離れた位置に配置し、その間にTEM波(Transverse ElectroMagnetic wave)のようなモードを閉じ込めることで、インピーダンス整合を実現します。

 

2. 直交二偏波 (Dual-Polarization)

 

「直交二偏波」とは、互いに直交する2つの偏波(例:水平偏波と垂直偏波、または 傾斜偏波)の送受信を、単一のアンテナ構造で同時に行えることを意味します。

  • 構造: TCDAに直交二偏波能力を持たせるため、通常、$\text{X}$字型に交差するクロスダイポール素子や、水平ダイポールと垂直ダイポールを互い違いに配置するインターレース(Interlaced)構造が採用されます。

  • 利点: 偏波ダイバーシティ、MIMO (Multiple-Input Multiple-Output) システムでの空間多重化、ターゲットの偏波情報の取得などに不可欠です。


 

⚙️ 構造と特徴

 

特徴 詳細
基本素子 ダイポールアンテナ、または変形されたダイポール素子(例:バタフライ型、折り返し型)を使用します。
偏波の実現 互いに直交する2つのダイポール(例:$\text{X}$字型)を一つの素子として用いるか、水平・垂直のダイポール素子を交互に配置することで、2つの独立した給電ポートを持ちます。
グランドプレーン 放射素子の後方にグランドプレーンを配置し、これが一種の反射器として機能することで、一方向への強い指向性を実現し、低背化にも寄与します。
整合層/誘電体 広い帯域にわたる整合を取るため、素子とグランドプレーンの間に誘電体基板誘電体シート、あるいは**FSS (Frequency Selective Surface)**のような構造を用いることがあります。
高性能 超広帯域(数オクターブ)、広角走査能力(走査範囲が広い)、および2偏波間の高いアイソレーション(分離度)を実現します。

 

📡 主な応用分野

 

その優れた帯域幅と走査能力から、主にレーダー次世代移動通信の分野で利用されます。

  • 広帯域レーダー:広い周波数範囲で高い分解能と目標検出能力を持つアレイアンテナ。

  • 5G/6G基地局:広範囲の周波数帯域とビームフォーミングを要求されるMassive MIMOアンテナ。

  • 電子走査アレイ(ESA):ビームの方向を機械的に動かすのではなく、位相器を使って電子的に走査するシステム。


ここで紹介されているのは、デュアル偏波の広帯域アレーアンテナの設計に関する内容です。

Design of Dual-Polarized Tilted-Beam Parasitic Array Antenna は、直交二偏波のアンテナアレイの設計と性能評価に関する動画であり、「直交二偏波密結合ダイポールアレーアンテナ」の関連技術として非常に参考になります。

 

 

 

 

 

T&MコーポレーションではNEXTEM社と協調してSIGLENT社/Ceyear社の電子計測器(スペアナ、VSG、VNA)によるアンテナの評価に必要なシステムの提案を行っております。お気軽にお問い合わせフォームよりご相談くださいませ。http://tm-co.co.jp/contact/

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