日本の生成AI開発企業であるPreferred Networks(PFN)グループが開発した大規模言語モデル(LLM)「PLaMo(プラモ)」の社会実装は、国産フルスクラッチモデルとしての高い日本語性能と、オンプレミス(自社環境)での利用を可能にすることで、様々な業界で急速に進んでいます。
PLaMoの社会実装は、主に以下の3つの戦略的なアプローチで展開されています。
1. 高性能な日本語フラッグシップモデルの提供
PLaMoは、経済産業省が推進する「GENIAC」プロジェクトに採択されるなど、国を挙げた開発支援を受け、高性能化を続けています。
| モデル名 | 特徴と社会実装への貢献 |
| PLaMo Prime (例: PLaMo 2.0 Prime) | PLaMoのフラッグシップモデルで、日本語における生成性能と指示追従性能が世界トップクラスと評価されています。行政文書の作成支援、社内問合せ対応、各種コンテンツ生成など、高度な自然言語処理(NLP)タスクの精度を大幅に向上させ、企業の生産性向上に貢献します。 |
| PLaMo Lite | 大規模言語モデル(LLM)と比較してコンパクトで軽量なモデルです。自動車やロボット、製造設備などのエッジデバイスやオンプレミス環境での動作を可能にし、クラウドを介せない現場や機密性の高い環境でのAI活用(ローカルLLM)を実現します。 |
2. 業界・用途特化型サービスの展開
PLaMoの持つ高い基礎性能を特定の用途に特化させることで、専門性の高い領域への社会実装を進めています。
| サービス・モデル | 主な用途と社会実装への貢献 |
| PLaMo翻訳 | 日本語の翻訳に特化してチューニングされたLLMです。自然で流暢な訳文を生成するだけでなく、原文のレイアウトやコード形式を維持したまま翻訳できるため、ビジネス文書や技術文書の翻訳業務の効率を飛躍的に高めます。一定条件を満たす中小企業や個人向けにオンプレミス利用も提供されており、機密性の高い文書の翻訳をセキュアに行うニーズに応えています。 |
| PLaMo Chat | PLaMo Primeモデルを搭載した対話型AIアシスタントです。カスタマーサポート、教育現場、コンテンツ制作など、幅広い対話型タスクで活用されています。 |
| PLaMo 自動分類機能 | 大量のテキスト情報に対してPLaMoを用いた柔軟な分類を行います。データ分析の目的に合わせたカテゴリ提案や、LLMによる学習データ不要の分類により、業務効率の向上に貢献します。 |
3. 社会基盤への導入とパートナーシップ
地方自治体や他企業との連携を通じて、PLaMoが社会のインフラの一部として機能するための実装が進んでいます。
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行政サービスへの導入:
高性能な日本語モデルとして、コモンズAIなどを通じて約150の自治体に提供が開始されています。これにより、行政相談や文書作成の支援など、住民向けサービスの効率化や迅速な情報提供に貢献しています。
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エコシステム構築に向けた連携:
PFNは、**さくらインターネットや情報通信研究機構(NICT)**などと基本合意を締結し、「安心安全で日本社会と調和する国産生成AIのエコシステム構築」を推進しており、PLaMoがその中核技術となることを目指しています。
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Function Calling機能:
PLaMoに搭載されたこの機能は、LLMと外部のコンピューターシステムを連携させる**「連携装置」として機能します。これにより、PLaMoは単にテキストを生成するだけでなく、外部の業務システムを操作するAIエージェント**としての応用(例: 予約システム連携、データベース検索)が可能になり、社会実装の範囲を拡大しています。



