
Beyond 5G (B5G)、すなわち6Gは、2030年代の社会実装を目指し、世界各国で研究開発と標準化に向けた競争が激化している次世代通信規格です。
グローバルなトレンドは、単なる通信速度の向上を超え、現実世界(物理空間)とサイバー空間(デジタル空間)を高度に融合させ、あらゆる産業と社会活動の基盤となるインフラを目指すという点に集約されています。
🌎 6Gのグローバル・ビジョン
6Gのビジョンは、従来の通信のKPI(Key Performance Indicator)を限界まで高めると同時に、新たな機能性を追求しています。
1. 究極の高性能化 (Beyond 5G KPIs)
KPI (性能目標) | 5Gとの比較 (目安) | 6Gが実現する体験 |
ピークデータレート | 最大1 Tbps (5Gの10倍〜100倍) | ホログラフィック通信、超高精細なメディアストリーミング。 |
遅延 | 超低遅延 (ミリ秒以下) | 触覚・ハプティック通信、遠隔手術。 |
接続密度 | 5Gの10倍以上 | 膨大なIoTセンサーの同時接続、デジタルツイン。 |
位置精度 | 高精度測位 (サブセンチメートル級) | 精密なロボット制御、AR/VRにおけるリアルな位置合わせ。 |
エネルギー効率 | 1/100 (5G比) | 持続可能な社会実現に貢献するネットワーク。 |
2. 社会的・機能的な新価値の創出
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テレイグジスタンス(遠隔臨場感): 空間的な制約を超え、遠隔地からまるでそこにいるかのような感覚(触覚や感情を含む)を伴う共同作業や体験(TeleXサービス)を実現します。
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デジタルツイン / サイバー・フィジカル・システム (CPS): 現実世界をサイバー空間に精密に再現し、リアルタイムでの予測、シミュレーション、最適化、自律制御を可能にします。
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信頼性・レジリエンス: サイバーセキュリティを常に確保し、災害や障害から瞬時に回復するネットワークを構築します。
🛠️ 鍵となる技術トレンド
このビジョンを実現するために、世界各国で以下の主要な技術領域に重点が置かれています。
1. 超高周波数帯の活用
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テラヘルツ帯 (THz): 究極の超高速・大容量通信を実現するため、100 GHz以上のテラヘルツ帯の利用が研究されています。ただし、伝搬損失が大きいという課題解決が必要です。
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高帯域ミリ波: 既存のミリ波帯(28 GHz帯など)よりもさらに高い周波数帯の活用が進められます。
2. AIのネットワークへの統合
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自律性 (Autonomy): AIがネットワークの監視、最適化、障害対応を自律的に行い、手動介入なしで最適なパフォーマンスを維持する自律型ネットワークの構築が不可欠です。
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AI for Network: AIを通信管理、リソース配分、セキュリティ強化などに活用します。
3. 通信領域の拡大と統合
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非地上系ネットワーク (NTN: Non-Terrestrial Networks): 地上基地局だけでなく、衛星やHAPS(高高度プラットフォーム局)、ドローンなどを活用し、空、宇宙、海洋を含むあらゆる場所で途切れのないユビキタスな接続(全地球的なカバレッジ)を実現します。
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オールフォトニクス・ネットワーク: NTTなどが推進する、ネットワークの末端まで光技術を適用し、通信の高速化と低消費電力化を目指す技術も6Gの基盤技術として重要です。
4. 新たな無線技術
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再構成可能インテリジェント・サーフェス (RIS/IRS): 壁や窓などに設置する超薄型のメタサーフェスにより、電波を反射・屈折・制御し、カバレッジや効率を向上させる技術。
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分散MIMO/大規模MIMO: 多数のアンテナを分散配置することで、通信容量と信頼性を劇的に向上させます。
🌍 各国・地域の取り組み状況
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韓国: 他国よりも早い2028年頃の6G商用化を目標に掲げ、研究開発と標準特許確保戦略を国家戦略として推進しています。
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米国: DoD(国防総省)などが中心となり、研究開発投資を行っています。
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欧州 (EU): Hexa-Xなどの大規模プロジェクトを通じて、6Gのビジョン、ユースケース、技術ロードマップを策定しています。
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日本: Beyond 5G推進コンソーシアムを中心に、官民連携で6Gの国際競争力強化と早期導入を目指しており、特にオールフォトニクス・ネットワークやNTNなどの基盤技術に重点を置いています。