
宇宙天気(Space Weather: SPW)とは、主に太陽の活動に起因する、地球周辺の宇宙環境や地球大気の変動現象、およびそれが私たちの技術システムや生活環境に及ぼす影響全般を指します。
「SPW」という略称は、英語の「Space Weather Phenomena/Prediction」または単に「SpW」として広く使われています。
太陽活動を源とする主な現象
宇宙天気の変動を引き起こす主な太陽活動には、以下の3つがあります。
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太陽フレア (Solar Flares) 🔆:
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太陽表面で突発的に起こる大爆発現象です。
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影響: 爆発直後に放出される強力なX線や紫外線が地球大気に到達し、電離層を急激に乱します。これにより、短波通信やGPS信号に障害(デリンジャー現象)を引き起こします。
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太陽高エネルギー粒子線現象 (Solar Energetic Particles: SEP) ✨:
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太陽フレアやコロナ質量放出(CME)に伴い、高エネルギーのプロトン(陽子)や電子が放出され、数十分から数時間で地球近傍に到達します。
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影響: 宇宙飛行士への被ばくリスク、人工衛星の電子機器の誤作動や損傷(トータルドーズ劣化など)、航空機乗員の被ばく量増加を引き起こします。
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コロナ質量放出 (Coronal Mass Ejection: CME) 💥:
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太陽から大量のプラズマ(荷電粒子と磁場)が宇宙空間に放出される現象です。地球に到達するまでに通常2~3日かかります。
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影響: 地球の磁気圏に衝突すると大規模な磁気嵐を引き起こします。
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地上の送電インフラ: 変圧器に異常な誘導電流(地電流: GIC)が流れ、過熱や故障、大規模停電(例: 1989年ケベック州の大停電)の原因となることがあります。
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衛星・通信: GPSや衛星通信の精度低下、衛星の軌道減衰(ドラッグ)増加、衛星姿勢制御の障害。
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地磁気観測: 地磁気の大きな変動に伴い、異常な低緯度オーロラが観測されることがあります。
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対策と予報の重要性
現代社会は、衛星通信、GPS、電力網といったインフラを宇宙環境に依存しているため、宇宙天気の変動による影響(宇宙天気災害)は重大なリスクとして認識されています。
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宇宙天気予報: 太陽活動を常時観測し、磁気嵐などの現象を予測して、インフラ運用者に情報を提供します。
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防災・減災: 予報に基づき、電力会社が送電網の負荷を調整したり、航空会社が極域航路を回避したり、衛星運用者が衛星を安全なモードに切り替えたりするなどの対策が取られます。
各国政府や研究機関(日本ではNICTなど、米国ではNOAA/SWPCなど)が、宇宙天気の監視と予報の高度化に取り組んでいます。