
140nm SiGe BiCMOSとは、シリコンゲルマニウム(SiGe)ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)と、標準的なCMOS(相補型金属酸化膜半導体)トランジスタを、140ナノメートル(nm)の製造プロセスノードで集積した高性能な半導体技術のことです。
この技術は、超高周波(RF)と高速デジタル信号処理の両方を単一のチップで実現できるため、主に次世代の通信およびレーダーシステムに用いられます。
⚙️ 構成要素と技術的特徴
1. SiGe BiCMOS (シリコンゲルマニウム・バイシーモス)
これは、以下の2つの異なるトランジスタ技術を組み合わせたものです。
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SiGe HBT (バイポーラ・トランジスタ):
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役割: 主にRF回路、アナログ回路、および超高速デジタル回路に使用されます。
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特徴: ベース層にシリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)の合金を用いることで、電子の移動度を向上させ、非常に高い動作周波数fTやfMAXを実現します。高性能なプロセスでは、fT / fMAXが300GHzを超えるものもあり、これにより、ミリ波や光通信レベルの高速処理が可能です。
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CMOS (シーモス):
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役割: ロジック回路やデジタル信号処理(DSP)、メモリ、低周波数のアナログ回路に使用されます。
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特徴: 低消費電力で高集積化に優れており、システム全体の制御やデジタル処理を担います。
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2. 140nm ノード
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意味: トランジスタの最小加工寸法(ゲート長など)の世代を示します。140nmは、比較的高速で高性能なデバイスを製造できる成熟したプロセスノードです(ただし、最新のロジックCMOSノードは5nm以下に微細化されています)。
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役割: この微細化により、高速なSiGe HBTと高集積なCMOSロジックを効果的に統合することができます。
🚀 主要な用途
140nm SiGe BiCMOSプロセスは、その高速性と集積度のバランスから、特に以下の分野で利用されています。
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高速データ通信:
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光ファイバトランシーバ: 100GbE、400GbE、さらには800Gb/s以上のデータレートを持つ、TIA(トランスインピーダンスアンプ)、LD(レーザドライバ)、CDR(クロックデータリカバリ)などの光モジュールコンポーネント。
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高周波無線通信 (RF):
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5G/6G ミリ波 (mmWave):アンテナ素子を多数集積するフェーズド・アレイ・アプリケーション(例:送受信モジュール)。
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自動車用レーダー:
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24 GHz および77 GHz帯の車載レーダーシステム。高性能な送受信機を低コストで実現できます。
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その他:
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GPSレシーバ、衛星通信システム、航空宇宙システム。
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この技術の最大の利点は、超高速なRF/アナログ機能(SiGe HBT)と、複雑な制御・信号処理機能(CMOS)を単一チップに集積できる点にあります。これにより、システム全体のサイズ、消費電力、およびコストを削減できます。
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