DC電源レール(パワーレール)に重畳している**微小信号(リップル、ノイズ、トランジェントなど)**を正確に測定するには、大きな直流電圧成分(DCオフセット)を適切に扱い、測定器やプローブのノイズの影響を最小限に抑えるための特別な手法が必要です。
主に、オシロスコープと専用プローブを用いた測定が一般的です。
1. 測定の基本戦略
微小信号を正確に測定するための重要なポイントは以下の通りです。
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DC成分の除去(AC結合): 大きなDC電圧(例:5V、3.3V)に重畳した小さなAC信号(例:数mVのノイズ)をそのまま測定すると、オシロスコープのレンジをDC電圧に合わせる必要があるため、AC信号の分解能が著しく低下します。オシロスコープのAC結合(交流結合)機能を使ってDC成分をカットすることで、垂直軸の感度を上げ、微小なAC信号を拡大して観測できるようにします。
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低ノイズ測定システム: パワーレールのノイズレベル(数mV~数十mVp-p)は、測定器自体のノイズ(ノイズフロア)に近いことが多いため、低ノイズのオシロスコープと専用プローブの使用が不可欠です。
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適切なプローブの選択と接続: 測定結果の正確性を大きく左右します。
2. 適切な測定方法(プローブと接続)
① パワーレール・プローブの使用(最も推奨)
パワーレール・プローブ(またはパワーインテグリティ・プローブ)は、この種の測定のために特別に設計されたアクティブプローブです。
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特徴:
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低ノイズフロア(低雑音): 測定システム自体のノイズが非常に低く抑えられています。
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広いオフセットレンジ: プローブ側で大きなDC電圧(例:±24Vや±60V)を打ち消すことができるため、オシロスコープの垂直感度を最大限に上げて微小なAC成分だけを拡大して観測できます。
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1:1減衰比: 信号の減衰が少ないため、オシロスコープのノイズフロアの影響を受けにくいです。(従来の10:1パッシブプローブはノイズを過大に測定する傾向があります。)
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短いグラウンド接続: 高周波ノイズの拾い込みを防ぐため、プローブのGND接続を極めて短くするためのチップやアクセサリが付属しています。
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② 50Ω終端とAC結合
専用プローブがない場合、一般的なオシロスコープとプローブを使用する場合でも、以下の工夫が必要です。
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50Ω同軸ケーブルと50Ω終端: オシロスコープの入力インピーダンスを50Ωに設定し(または外部50Ω終端を使用)、同軸ケーブルで測定ポイントと接続します。これにより、インピーダンス整合が取れ、高周波の反射やリンギングを抑制できます。
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DCブロッキングコンデンサ: DC負荷がかかるのを防ぐため、パワーレールと50Ωラインの間にコンデンサを直列に入れ、DC成分をカットします(AC結合と同じ効果)。
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グラウンド接続の短縮: 測定ポイントの直近にグラウンド端子を接続し、プローブの先端とグラウンド線のループ面積を最小限に抑えます。長いグラウンド線はアンテナとなり、外来ノイズを拾いやすくなります。
3. その他の考慮事項
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帯域制限(帯域リミット): オシロスコープの帯域を測定したい信号に応じて制限する(例:20MHz)ことで、不要な高周波ノイズをカットし、より安定したリップル電圧の測定を行うことができます。ただし、トランジェントのような広帯域のノイズを観測する場合は、帯域制限を外す必要があります。
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高分解能モード: オシロスコープによっては、垂直軸の分解能を一時的に向上させる高分解能 (High Resolution)モードや12ビット高分解能ADCを搭載したもの(SIGLENT SDS300X HDなど)があり、微小信号の測定精度向上に役立ちます。
パワーレールプローブは、微小な電源ノイズを正確に把握するために有効です。
真の電源ノイズ観測のための正しいプローブ選択 ~パワーレールプローブ~ SIGLENT SAP4000P
この動画は、通常のパッシブプローブとパワーレールプローブの違いを比較し、微小な電源ノイズ(リップル)を正確に観測するためにパワーレールプローブが必要であることを示しています。
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製品紹介:SIGLENT社 SAP4000P
パワーインテグリティ測定用シグレント・パワーレールプローブSAP4000P
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https://tm-co.co.jp/SAP4000P_UserManual





