低電圧・大電流を供給するDC-DCコンバータ(電源回路)の設計と運用には、高性能なLSIへの安定した電力供給を妨げる、以下のような技術的な課題があります。
1. 電力供給の品質と安定性(パワーインテグリティ)
| 課題 | 説明 |
| 過渡応答性の遅延 | LSIの急激な電流要求(負荷変動)に対し、電源回路が素早く電圧を安定させることが困難です。応答が遅れると、アンダーシュート(電圧の急落)やオーバーシュート(電圧の急上昇)が発生し、LSIの誤動作や破壊のリスクが高まります。 |
| IRドロップ(電圧降下) | 大電流化により、インダクタやFET、さらには基板配線における抵抗成分による電圧降下(IRドロップ)が無視できなくなります。出力電圧が低いほど、相対的な変動率が大きくなり、供給電圧の精度を維持することが困難になります。 |
| ノイズ(EMI/RFI)の増大 | 大電流に対応するため、DC-DCコンバータは高周波なスイッチング方式を採用します。このスイッチング電流の増加に伴い、リップルノイズや**放射ノイズ(EMI)**が増大し、他の敏感な回路(無線、アナログなど)に悪影響を及ぼしたり、規制値をクリアできなくなったりするリスクがあります。 |
2. 効率と熱設計の課題
| 課題 | 説明 |
| 電力損失の増加と低効率化 | 導通損失(FETのオン抵抗)やインダクタの直流抵抗(DCR)による損失は、電流の二乗に比例して増加します(P=I2R)。大電流化が進むと、この損失が著しく増え、電源回路全体の電力変換効率が低下します。 |
| 発熱の深刻化 | 増加した電力損失の大部分が熱として放出されます。これにより、電源ICや周辺部品が過熱し、ヒートシンクの大型化や強制冷却などの複雑でコストのかかる熱対策が必要になります。 |
3. 実装とコストの課題
| 課題 | 説明 |
| 部品の大型化と実装面積 | 大電流に耐えるためには、インダクタやキャパシタ、パワースイッチ(FET)などの部品も定格の大きい製品を選ぶ必要があり、部品が大型化します。これにより、高性能機器の小型化の要求と相反し、プリント基板上の実装面積を圧迫します。 |
| 設計の複雑化・難易度の上昇 | 低電圧・大電流の環境下で、上記のすべての課題(安定性、ノイズ、熱、効率)を高いレベルで両立させるためには、経験豊富なアナログ設計技術や高度なデジタル制御技術が必要となり、設計難易度が飛躍的に上昇します。 |
💡 主な解決策の動向
これらの課題に対応するため、以下のような技術が導入されています。
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マルチフェーズ(多相)方式: 複数のDC-DCコンバータを並列に動作させ、電流を分散することで、各部品の負荷と発熱を低減し、応答速度を向上させます。
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パワーモジュール: インダクタやFET、制御ICなどを一つのパッケージに収め、配線を最短化することで、ノイズや寄生インダクタンスを低減し、実装を容易にします。
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デジタル制御: アナログ制御の限界を超える高速な過渡応答を実現するため、デジタル回路を用いてフィードバックループを制御する技術が進化しています。
真の電源ノイズ観測のための正しいプローブ選択 ~パワーレールプローブ~ SIGLENT SAP4000P
この動画は、通常のパッシブプローブとパワーレールプローブの違いを比較し、微小な電源ノイズ(リップル)を正確に観測するためにパワーレールプローブが必要であることを示しています。
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製品紹介:SIGLENT社 SAP4000P
パワーインテグリティ測定用シグレント・パワーレールプローブSAP4000P
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https://tm-co.co.jp/SAP4000P_UserManual








