チップレット(Chiplet)技術の車載化は、自動運転や電動化の進化を支える車載ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)を実現するための最重要課題として、官民一体で研究開発が加速しています。
日本では、自動車メーカーと半導体関連企業が連携した自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA)が設立され、2030年以降の量産車への搭載を目指しています。
1. 車載チップレット研究開発の背景と目標
従来の自動車用SoC(System on Chip)は、高性能化の要求(特に自動運転レベル3以上)と、厳格な車載信頼性・リアルタイム性の要件との間で限界に達しつつあります。チップレットは、このギャップを埋める解決策として注目されています。
📌 目標
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高性能化と低コストの両立: 最先端の微細プロセスを必要なコア機能にのみ適用し、周辺の低速回路には成熟した安価なプロセスを用いることで、高性能を維持しつつコストを最適化します。
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開発期間の短縮: 異なる機能を持つチップレット(CPU、メモリ、I/O、AIアクセラレータなど)をモジュールのように組み合わせて設計できるため、開発の柔軟性が増し、期間が短縮されます。
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歩留まりの向上: 大規模なSoCをモノリシック(単一)チップで作ると、不良箇所が一つでもあると全体を廃棄する必要がありますが、チップレット化により良品(KGD: Known Good Die)だけを選別・統合できるため、歩留まりが向上し、コストメリットが生まれます。
2. 車載化特有の課題と研究開発内容
データセンター向けのチップレット技術を車載へ応用するには、自動車特有の過酷な環境と安全性に関する課題をクリアする必要があります。
A. 信頼性・耐久性の課題
| 課題 | 研究開発の方向性 |
| 高温・長寿命 | 車載部品は広い温度範囲(-40℃ ~ 125℃以上)での動作と、10年以上の長寿命が要求されます。チップレットを接続する先進パッケージング技術(2.5D/3D実装、TSVなど)の高温・振動耐性を強化します。 |
| 熱・ノイズ対策 | 複数の高性能チップレットが密に集積するため、熱の集中やノイズ(EMI)が発生しやすくなります。これらを抑えるための高効率な熱管理・冷却システムや、ノイズ遮断技術の開発が必要です。 |
B. リアルタイム性・安全性の課題
| 課題 | 研究開発の方向性 |
| リアルタイム性能 | 自動運転にはミリ秒単位の応答が求められます。チップレット間のデータ転送速度を極限まで高め、モノリシックチップと変わらない高速・高信頼なデータ転送技術を確立する必要があります。 |
| 機能安全(ISO 26262) | 自動車特有の安全規格に対応するため、チップレットレベルで故障検出・隔離・冗長化の機能を組み込み、機能安全要件を満たす設計・検証手法を確立します。 |
C. 規格・標準化の課題
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異なるメーカー間でチップレットを自由に組み合わせるためには、インターフェースの標準化が不可欠です。ASRAなどの組合を通じて、国内だけでなく国際標準化も視野に入れた技術仕様の確立が進められています。
3. 日本における研究開発体制
国内の自動車メーカー(トヨタ、ホンダ、日産など)、電装部品メーカー(デンソーなど)、半導体関連企業が参画する自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA)が、この分野の研究開発を主導しています。
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推進体制: ECU、EDA(電子設計自動化)、SoCベンダーまでが垂直連携する形で共同研究を進めています。
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政府支援: NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業として採択されるなど、国からも強力な支援を受けています。
米半導体新興のテンストレント、ラピダス
複数の半導体チップを組み合わせる「チップレット型半導体の設計に向けた協業を始める」
Beyond Innovation: RISC-V’s Path to Mass Adoption with Mature IP by Wei-Han Lien | Tenstorrent (USA)
概要: AIハードウェア市場においてTenstorrentは、低コストRISC-Vベースの開発システムとオープンソースのAIコンパイラスタックを提供することで、開発エンジニアや開発の早期フェーズにある顧客をターゲットとして、チームの拡充、製品出荷を進めています。
高帯域幅メモリなどの高価な部品を避け、テンソルプロセッサアーキテクチャを採用することでメモリ帯域幅の必要性を低減し、コストパフォーマンスを実現している点です。
ハードウェアやソフトウェア、オープンソースの協調動作が重要な役割を果たすとしています。スティーブ・ジョブズのようにユースケースを中心に考えた卓越した製品を作ることが成功の鍵だと考えています。







