信号情報(SIGINT / シギント)とは、Signals Intelligenceの略で、電子信号の傍受、処理、分析を通じて収集される諜報活動の総称です。
これは、国家の安全保障や軍事戦略にとって極めて重要な情報源であり、電磁波を放出するあらゆるシステムが収集の対象となります。
📡 SIGINTの主要な分類
SIGINTは、傍受する信号の種類によって、主に以下の3つの部門に分類されます。
1. 通信情報(COMINT: Communications Intelligence)
敵や目標とする組織が行う通信から情報を収集・分析することです。
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対象: 無線通信、電話、インターネット通信、メール、チャットなど、人間同士が情報を交換するために使用する信号。
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目的: 通信内容の傍受や暗号解読(クリプトアナリシス)、通信パターン(誰が、いつ、どこで、どれくらいの頻度で通信しているか)の分析を通じて、意図、計画、能力を把握します。
2. 電子情報(ELINT: Electronic Intelligence)
通信以外の非通信用電子信号から情報を収集・分析することです。
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対象:
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レーダー:軍用機や艦船、地上防空システムが使用するレーダーの周波数、出力、パルス幅、変調方式などの技術特性。
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ナビゲーションシステムや電子戦システムからの信号。
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目的: 敵の電子機器の能力(種類、配置、射程)や位置を特定し、その活動パターンを把握します。
3. 外国信号計測情報(FISINT: Foreign Instrumentation Signals Intelligence)
試験や運用を目的とした計測用の電子信号から情報を収集・分析することです。
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対象:
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テレメトリー(Telemetry):ミサイル、ロケット、航空機、衛星などの試験飛行や運用中に、性能データを地上に送信するために使われる信号。
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目的: 兵器システムの設計、性能、技術レベルに関する詳細な情報を取得します。
🌍 SIGINTの目的と重要性
SIGINTは、軍事作戦や国家の意思決定において、以下のような重要な役割を果たします。
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早期警戒: 敵の通信量やレーダーの活動増加などを分析することで、軍事行動の兆候をいち早く察知します。
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敵の特定と追跡: 敵の部隊や兵器、通信拠点の位置を正確に割り出し、その動向をリアルタイムで追跡します。
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技術評価: 敵の新しい兵器システムや技術(レーダー、ミサイルなど)の能力を分析し、自国の防御・攻撃戦略を立てるための基礎情報とします。
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電子戦支援(ESM): 戦闘において、敵のレーダーや通信を検知・識別し、ジャミング(電波妨害)などの電子攻撃を行うための情報を提供します。
SIGINTは、受動的(パッシブ)な情報収集であり、基本的に自ら電波を発することなく静かに傍受するため、敵に気付かれにくいという点で、他の諜報活動(人間情報、画像情報など)とは異なる特長を持っています。




