SIGLENT （シグレント）SDS7000A シリーズ デジタル・オシロスコープ

ASA Motion Linkは、Automotive SerDes Alliance (ASA)によって策定された、車載カメラ、センサー、ディスプレイ接続のためのオープンな高速SerDes（シリアライザ/デシリアライザ）規格です。

これは、自動運転（ADAS）や車載インフォテインメント（IVI）システムの進化に伴い、自動車内で爆発的に増加している高解像度データ伝送のニーズに応えるために開発されました。

🚗 Automotive SerDes Alliance (ASA) とは

ASAは、自動車メーカー（OEM）、ティア1サプライヤー、半導体ベンダー、ケーブル・コネクタメーカーなど、175社以上（2025年10月時点）が参加する非営利の業界団体です。

• 目的: 従来、メーカー独自規格が中心であった車載SerDes技術をオープンスタンダード化し、マルチベンダー間での相互運用性を確立することを目指しています。

• 参加企業例: BMW、Ford、GM、Hyundai Kia Motor Company、Stellantis、Volvoなどの主要OEMが参加しています。

💡 ASA Motion Link (ASA-ML) の主要技術と特徴

ASA-MLは、次世代の車載通信の要求に合わせて設計されており、特に以下の点が特徴的です。

1. 非対称SerDes通信

ASA-MLは、データ伝送の要求が一方向で非常に高いという車載カメラやセンサーの特性に最適化された非対称通信を採用しています。

• ダウンリンク（カメラ/センサー 　→　 ECU/CPU）: 高速（最大8Gbps〜16Gbps）で、大量の映像やセンサーデータを伝送します。

• アップリンク（ECU/CPU　→　カメラ/センサー）: 低速（50Mbps〜100Mbps）で、カメラの制御や設定などのコマンドを伝送します。

• メリット: これにより、対称SerDesと比較して、消費電力の低減とトランシーバーの複雑さの最小化を実現します。

2. 時分割多重（TDD）方式

• TDD (Time Division Duplexing): ダウンリンクとアップリンクのトラフィックを時間的に分離して、単一の物理リンク（ケーブル）上で双方向通信を実現します。これにより、配線コストと重量の削減に貢献します。

3. 高い信頼性と安全性

• 長距離伝送: 同軸ケーブル（最大15m）やシールド付きツイストペア（SDP/STP）ケーブル（最大10m）に対応し、長距離での高信頼な伝送を可能にします。

• PoC (Power over Cable) サポート: データケーブルを通して電源も供給でき、配線の簡素化につながります。

• セキュリティ: **リンク層のセキュリティ（ASAsec）**をオプションとして提供し、データや認証情報の保護に対応しています。

• 機能安全: ISO 26262に準拠した**ASIL（Automotive Safety Integrity Level）**への対応も可能です。

🎯 応用分野

ASA Motion Linkは、大容量かつ高信頼性が求められる、以下の車載システムの中核を担います。

• 先進運転支援システム (ADAS): 高解像度カメラ、LiDAR、レーダーなどのリモートセンサーと中央処理ユニット（ECU/HPC）間のデータ伝送。

• 車載インフォテインメント (IVI): 高精細なマルチスクリーンデジタルコックピットやe-ミラーへの映像伝送。

ASA-MLは、オープン規格として複数のベンダー間の相互運用性を保証することで、自動車メーカーにとってサプライチェーンの柔軟性とコスト競争力の向上をもたらす重要な技術として注目されています。