SiC(炭化ケイ素)コンポーネントの上面冷却(TSC: Top Side Cooling)パッケージについて。
TSCパッケージは、特に高効率化が進むSiCパワー半導体の性能を最大限に引き出すために開発された放熱技術です。
❄️ 上面冷却(TSC)パッケージとは
上面冷却パッケージは、従来のパワー半導体モジュールが**底面(ベースプレート)**からヒートシンク(放熱器)へ熱を逃がすのに対し、半導体チップの真上から効率的に熱を逃がすように設計された構造です。
従来の冷却(底面冷却)との比較
| 特徴 | 従来の底面冷却 (BSC: Bottom Side Cooling) | 上面冷却 (TSC: Top Side Cooling) |
| 放熱経路 | チップ → 基板 → ベースプレート → ヒートシンク | チップ → 上面の冷却体 → ヒートシンク |
| 熱抵抗 | ベースプレートやんだ付け層などの複数の熱抵抗層があるため高い。 | 熱抵抗となる層が少なく、熱抵抗が低い。 |
| 設計の自由度 | 放熱が底面に限られる。 | 両面冷却も可能となり、ヒートシンク設計の自由度が高い。 |
| SiCとの相性 | SiCの能力に対し放熱が追い付かない場合がある。 | 高温動作、高効率のSiCの特性を最大限に引き出す。 |
🚀 TSCパッケージのメリット
SiCコンポーネントにTSCパッケージを使用することで、以下のような大きな利点が得られます。
1. 熱抵抗の低減と高性能化
TSCパッケージは、チップからヒートシンクまでの熱伝導経路が短く、熱抵抗が極めて低いため、チップが発生させた熱を素早く外部に逃がすことができます。これにより、SiCコンポーネントの動作温度上昇を抑制し、より大きな電流を流すことが可能になり、結果として機器の高出力化と高効率化に貢献します。
2. 高い電力密度
低熱抵抗化により、限られたスペースでより大きな電力を扱うことができるようになります。これは、電気自動車(EV)や急速充電器のように、小型化・軽量化(高電力密度化)が強く求められる分野で特に重要です。
3. 高周波駆動への対応
SiCは高速スイッチングが可能ですが、スイッチング損失が熱として発生します。TSCは高い放熱能力を持つため、SiCの高周波駆動能力を最大限に活用でき、インバーターなどの機器の小型化に繋がります。
💡 主な適用分野
TSCパッケージを採用したSiCモジュールは、主に以下のような分野で利用されています。
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電気自動車 (EV) のインバーター:モーターを駆動するための電力変換を行う中核部品で、小型化と高効率化に貢献します。
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急速充電インフラ:高電圧・大電流を扱うため、高効率な放熱が必須です。
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産業用高周波電源:太陽光発電(PV)のパワーコンディショナーや産業用溶接機など、高効率と高出力を両立させたい用途。



