Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)などの最新世代において、「非線形パワーアンプ(Non-linear PA)」の活用は、通信速度の向上と省電力化を両立させるための非常に重要な技術トレンドとなっています。
従来のWi-Fi RFFE(Radio Frequency Front-End)では、信号の歪みを避けるためにアンプの「線形(リニア)な領域」だけを使っていましたが、最新規格ではあえて「非線形な領域」まで使い切るアプローチが取られています。
1. なぜ「非線形」が注目されているのか?
パワーアンプ(PA)には、**「出力(パワー)を上げると効率は良くなるが、信号が歪む(非線形になる)」**という性質があります。
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従来の線形アンプ: 信号を歪ませないよう、最大出力からかなり余裕(バックオフ)を持たせて運用します。しかし、これだと電力効率が悪く、発熱も大きくなります。
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非線形アンプ: アンプの限界に近い、効率が最も高い領域で動作させます。そのままでは信号がめちゃくちゃに歪みますが、後述の**デジタル技術でその歪みを「打ち消す」**ことで、高効率と高品質を両立させます。
2. Wi-Fi 7 での重要性:4096-QAM の壁
Wi-Fi 7 では、一度に送るデータ量を増やすために 4096-QAM という非常に精密な変調方式を採用しています。
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この方式は、わずかな信号の歪み(AM/AM歪み、AM/PM歪み)でもデータ化け(エラー)が起きてしまいます。
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そこで、DPD(Digital Pre-Distortion:デジタル事前歪み補正) という技術を組み合わせた「非線形RFFE」が不可欠になります。
DPD(デジタル事前歪み補正)の仕組み
アンプで発生する歪みと「逆特性」の歪みを、送信前のデジタル信号にあらかじめ付加しておく技術です。
[元の信号] + [逆の歪み] + [アンプでの歪み] = [きれいな出力信号]
3. 非線形アンプ採用のメリット
| メリット | 内容 |
| 省電力化 | アンプを最も効率の良い飽和領域近くで動かせるため、消費電力が20〜40%削減されます。 |
| 低発熱 | 電力効率が上がる=熱として逃げるエネルギーが減るため、機器が熱くなりにくくなります。 |
| カバレッジ拡大 | 同じ電力消費でも、より強い電波(高出力)を送信できるため、通信距離が伸びます。 |
| 小型化 | ヒートシンク(冷却機構)を小さくでき、モバイル機器や小型IoT端末への搭載が容易になります。 |
4. 主要メーカーの動き
現在、Wi-Fi 7 向けの RFFE 市場では、非線形アンプに対応したフロントエンドモジュール(FEM)が主流になりつつあります。
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Qorvo (コーボ): Wi-Fi 7 向けに最適化された「Non-linear FEM」をいち早く市場に投入。
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Broadcom (ブロードコム): 独自の DPD 技術と連携する「FiFEM」シリーズを展開。
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Skyworks (スカイワークス): 高効率なパワーアンプと高度なフィルタリングを統合。
まとめ
非線形パワーアンプは、**「デジタル技術(DPD)でアナログの限界を突破する」**技術です。これにより、Wi-Fi 7 の超高速通信を、スマホのようなバッテリー駆動デバイスでも現実的な電力消費で実現できるようになっています。
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Wi-Fi 7 (IEEE 802.11be)とは
Wi-Fi 7 (IEEE 802.11be) は、Wi-Fi 6/6Eの後継となる次世代のWi-Fi規格で、「Extremely High Throughput (EHT)」という名称が示す通り、超高速・低遅延の通信を実現することを目的としています。 その主な特徴は以下の通りです。 1. 超高速通信 320MHzのチャネル帯域幅: Wi-Fi 6/6Eの最大160MH[…]
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