― dB / dBm / dBV / dBc の違いと正しい使い分け ―
電子計測・RF・光通信・電源評価の現場では、**dB(デシベル)**という単位を避けて通ることはできません。
しかし、dB は「数式としては理解しているが、実務で正しく使い分けられていない」単位の代表例でもあります。
本記事では、dB・dBm・dBV・dBc を工程視点で完全に整理し、示波器・スペクトラムアナライザ・OSA での実測イメージとともに解説します。
dBとは何か(まず最重要の前提)
dB は 絶対値を表す単位ではありません。
dB は常に、「基準に対してどれだけ違うか」を表す 比率の単位です。
この点を理解しないまま dB を使うと、測定結果の解釈を根本から誤ることになります。
なぜ dB が工程で使われるのか
dB が広く使われる理由は明確です。
・非常に広いダイナミックレンジを扱える
・掛け算・割り算を足し算・引き算に変換できる
・人間の感覚(音・光・ノイズ)に近い
そのため dB は、次のような分野で標準表記となっています。
・スペクトラムアナライザの電力表示
・FFT スペクトラムの振幅表示
・光通信における損失・利得評価
dB の基本定義(工程直感)
電力比の場合、dB は次の式で定義されます。
dB = 10 × log₁₀(P₂ / P₁)
ここで重要なのは、「必ず P₁ という基準が存在する」という点です。
この基準を明示しない dB 表記は、工程的には不完全です。
dBm とは何か(最も多用される絶対電力表現)
dBm は、1 mW を基準とした電力の dB 表現です。
基準が明確に定義されているため、dBm は「絶対電力」を表すことができます。
代表的な対応関係は以下の通りです。
0 dBm = 1 mW
10 dBm = 10 mW
−30 dBm = 1 µW
スペクトラムアナライザでの dBm 実測例
スペクトラムアナライザで信号を測定した際、表示が −20 dBmだった場合、これは1 mW の 1/100 の電力であることを意味します。
フィルタ評価、アンプ利得測定、EMI 測定では、この dBm 表示が最も基本となります。
dBV とは何か(電圧の対数表現)
dBV は、1 V(RMS)を基準とした電圧の dB 表現です。
電圧比の場合、dB は次の式で表されます。
dB = 20 × log₁₀(V₂ / V₁)
これは、電力が電圧の二乗に比例するためです。
オシロスコープでの dBV 使用例
オシロスコープでノイズ電圧を測定し、0.01 V RMSだった場合、これは−40 dBVに相当します。
FFT 表示やノイズ評価では、dBV 表記の方が変化量を直感的に把握できます。
dBc とは何か(相対比較専用の単位)
dBc は、キャリア(主信号)を 0 dB とした相対表現です。
絶対量は一切含まれず、
・高調波
・スプリアス
・位相ノイズ
などを評価するために使われます。
スプリアス評価における dBc
例えば、主信号が 0 dBc、
スプリアスが −60 dBc と表示された場合、
これは主信号に対して 60 dB 小さいことを意味します。
EMI や無線規格評価では、この相対評価が極めて重要です。
dB / dBm / dBV / dBc の整理表(工程視点)
dB:比率のみ(基準は文脈依存)
dBm:1 mW 基準の絶対電力
dBV:1 V RMS 基準の電圧
dBc:キャリア基準の相対量
この違いを曖昧にしたまま議論すると、測定結論は必ず破綻します。
エンジニアが最もよく犯す dB の誤り
dB を絶対値として扱う
dBm と dBc を混同する
電圧なのに 10log を使う
基準単位を明示しない
装置ごとに単位が統一されていない
これらはすべて、現場で実際に起きているミスです。
T&Mとしての工程実務ルール提案
測定・評価・報告では、次を強く推奨します。
dB 表記には必ず基準(m / V / c)を明記する
電力と電圧で log 係数を混同しない
スペアナ・示波器・OSA で単位を統一する
絶対量と相対量を明確に分けて議論する
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