― オシロスコープ測定で「何を見て、何を判断するか」―
スイッチング電源の評価では、単に「電圧が合っているか」「電流が流れているか」を確認するだけでは不十分です。
重要なのは、
・電圧と電流がいつ変化しているか
・両者の位相関係がどうなっているか
・その結果として損失・ノイズ・発熱がどう決まるか
を理解することです。
本記事では、スイッチング電源を例に、オシロスコープで観測される電圧・電流・位相の関係を工程視点で解説します。
スイッチング電源における基本構造
スイッチング電源は、大きく見ると次の要素で構成されています。
・スイッチング素子(MOSFET 等)
・インダクタ(コイル)
・コンデンサ
・負荷
これらが高速にオン・オフを繰り返すことで、電圧変換や電力供給を行っています。
この「高速スイッチング」こそが、電圧・電流・位相の理解を難しくしている要因です。
オシロスコープでまず見るべき電圧
最初に確認すべきなのは、スイッチングノードの電圧波形です。
ここでは、
・急峻な立ち上がり/立ち下がり
・オーバーシュート、リンギング
・スイッチング周波数
といった特徴が観測されます。
この電圧波形は、後述する電流波形や損失評価の基準になります。
スイッチング電流の特徴
スイッチング電源に流れる電流は、直流ではなく強い脈流成分を含む電流です。
特に重要なのは、
・MOSFET 電流
・インダクタ電流
・入力側/出力側のリップル電流
です。
これらの電流は、電圧と同時には変化しない点が重要です。
インダクタが生む位相遅れ
スイッチング電源では、インダクタの存在が位相関係を大きく左右します。
インダクタは、
・電流の変化を嫌う
・電圧が変化してから電流が追従する
という性質を持っています。
そのため、オシロスコープ上では、
・電圧が先に変化
・電流が遅れて変化
という波形関係が観測されます。
コンデンサが生む位相先行
一方、コンデンサに流れる電流は、・電圧変化に先行するという特性を持ちます。
スイッチング電源では、
・入力コンデンサ
・出力平滑コンデンサ
に大きなリップル電流が流れます。
この電流の位相を誤解すると、コンデンサの発熱・寿命評価を誤る原因になります。
電圧・電流・位相が損失を決める
スイッチング電源で最も重要なポイントの一つが、電圧と電流が同時に大きくなる瞬間です。
MOSFET の損失は、
・電圧が高い
・電流が大きい
この2つが重なる時間によって決まります。
オシロスコープで電圧と電流を同時に観測し、位相関係を確認することで、
・スイッチング損失
・ターンオン/ターンオフ損失
を定性的・定量的に評価できます。
オシロスコープでの位相確認方法
位相関係は、以下の方法で確認します。
・電圧を CH1、電流を CH2 に入力
・同一時間軸で同時表示
・立ち上がり点やピーク位置の時間差を確認
時間差 Δt と周期 T から、位相差は次のように求められます。
位相差[°]=(Δt / T)× 360
電流プローブ使用時の注意点
スイッチング電源測定では、電流プローブの選定と使い方が非常に重要です。
注意すべき点は以下です。
・帯域がスイッチング周波数に十分か
・DC 成分が測定できるか
・ゼロ調整が正しく行われているか
これらが不適切だと、位相関係やピーク電流を誤って判断してしまいます。
スイッチング電源測定でよくある誤解
電圧波形だけで動作を判断する
平均電流だけを見て安心してしまう
位相のずれを「ノイズ」と誤解する
帯域不足のプローブで測定してしまう
これらは、現場で非常によく見られる誤りです。
T&M視点での実務チェックポイント
スイッチング電源評価では、以下を意識してください。
・電圧・電流・位相を必ずセットで見る
・どの素子の電圧/電流かを明確にする
・損失や発熱と波形を結び付けて考える
・測定系(プローブ・帯域・GND)を疑う
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