― EMC・信号品質・計測の共通言語 ―

 

デジタル回路とアナログ回路は、かつては別々の技術分野として扱われてきました。
しかし現在では、その境界はほとんど意味を持たなくなっています。

プロセッサや FPGA を中心としたデジタル回路であっても、
実際の信号伝送や電源供給は アナログ現象そのもの であり、
EMC や信号品質の問題は必ずアナログ的な視点を必要とします。

本記事では、時間ドメインと周波数ドメインという2つの見方を、計測・設計・EMC評価の共通基盤として整理します。

 

なぜ「デジタルでもアナログ理解」が必要なのか

デジタル回路は「0」と「1」で動作しているように見えますが、その内部では必ず、

・電圧の立ち上がり・立ち下がり
・電流の流れ
・電界・磁界の変化

が発生しています。

つまり、デジタル信号とは、高速に変化するアナログ信号です。

この本質を理解していないと、

・ノイズがなぜ発生するのか
・なぜ特定の条件で誤動作するのか
・なぜEMIが増えるのか

といった問題の根本原因が見えなくなります。

 

電圧・電流は「結果」であり「本質」ではない

回路設計や計測では、電圧[V]や電流[A]を直接扱います。

しかし、EMC や信号伝送の本質は、電界[V/m]と磁界[A/m]の振る舞いにあります。

電圧や電流は、それらの電磁界現象を 回路という枠組みで見た結果にすぎません。

この視点を持つことで、回路図だけでは説明できない問題を理解できるようになります。

 

時間ドメインで見るという考え方

時間ドメインとは、信号が時間とともにどのように変化するかを見る視点です。

オシロスコープで観測する波形は、まさに時間ドメインの情報です。

時間ドメインでは、

・立ち上がり時間
・オーバーシュート
・リンギング
・ジッタ

といった現象を直接確認できます。

高速デジタル回路やスイッチング電源の評価では、まず時間ドメインで現象を把握することが重要です。

 

周波数ドメインで見るという考え方

周波数ドメインとは、信号がどの周波数成分をどれだけ含んでいるかを見る視点です。

FFT やスペクトラムアナライザで得られる情報が、周波数ドメインの代表例です。

周波数ドメインでは、

・不要輻射の原因
・ノイズの広がり
・フィルタの効果

といった点を把握しやすくなります。

 

時間ドメインと周波数ドメインは表裏一体

時間ドメインと周波数ドメインは、どちらか一方が正しく、もう一方が間違いという関係ではありません。

同じ現象を、

・時間軸で見ているか
・周波数軸で見ているか

の違いにすぎません。

時間ドメインで見た急峻な立ち上がりは、周波数ドメインでは広帯域成分として現れます。

この対応関係を理解することが、EMC・信号品質・電源設計の要となります。

 

なぜ EMC は「難しく感じられる」のか

EMC が難しく感じられる理由の一つは、回路・時間・周波数・空間という複数の視点を同時に扱う必要があるからです。

しかし、

・時間ドメインで現象を捉え
・周波数ドメインで要因を特定し
・電磁界として本質を理解する

という整理ができれば、問題は「見えないもの」ではなくなります。

 

工程視点での実務的アプローチ(T&M視点)

計測・評価の現場では、次の順序を推奨します。

まず時間ドメインで現象を観測する
次に周波数ドメインで成分を分析する
最後に電磁界として原因を整理する

この流れを意識することで、試行錯誤に頼らない 再現性のある対策 が可能になります。

 

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