この記事ではSiglent製 SDS804X-HDによる校正信号の測定を例にしてオシロスコープの基本的な操作方法について解説しています。

オシロスコープとは

まずはオシロスコープとはどのような計測器なのか整理しておきましょう。

オシロスコープの用途

回路の特性を評価するための計測器は用途によって様々です。例えば電圧や電流を数値として測定する場合にはデジタルマルチメータを使用します。また周波数特性を解析したい場合はネットワークアナライザやスペクトラムアナライザを使用します。その中でオシロスコープは電圧や電流の時間経過を波形として測定するために使用されます。

 

     

 

 

時間経過の波形は、いわゆる回路の過渡応答特性のことです。電子機器内部では様々な回路が時々刻々と電気信号を生成しています。そしてオシロスコープはそれらの電気信号が設計した通りの波形となっているかを測定するための計測器です。

 

各部の名称

フロントパネルに搭載されたボタン、またはタッチディスプレイからオシロスコープの操作を行います。SDS804X-HDの各部の名称は以下のとおりです。

 

    
 

 

各部の名称をすべて覚える必要はありませんが、操作の説明を読むときの参考にしてください。

 

アクセサリ

オシロスコープの入力端子はBNCコネクタです。このBNCコネクタに直接信号を入力することもできますが、多くの場合は電圧プローブを接続して回路の電圧を測定します。

 

 

    
 

 

オシロスコープの基本操作

オシロスコープで信号を測定するにあたって、基本的な操作項目は以下の3つです。

  • 垂直軸操作(電圧設定)
  • 水平軸操作(時間設定)
  • トリガー操作(タイミング設定)

オシロスコープに波形を表示させるための操作順序はケースバイケースですが、ここでは校正信号の測定を例に垂直軸、水平軸、トリガーの順に設定していきます。

 

 

    
 

 

垂直軸操作(電圧設定)

はじめは電圧に関わる垂直軸の設定です。垂直軸の操作はフロントパネルの「Vertical」で囲われたボタンとノブを使用します。

 

     

 

 

 

チャネル設定

画面上に波形を表示するには、プローブを接続したチャネルのボタン(ここでは「1」)を押下します。すると画面上に波形が表示されます。ここではチャネル1の電圧プローブを校正信号端子に接続しています。

        

 

チャネル1ボタンを押下すると画面右にメニュー「C1」が表示されます。ここで入力チャネルの設定を行います。

「Channel」では波形の表示設定を切り替えられます。「ON」が波形表示、「OFF」が波形の非表示です。

「Coupling」は信号の結合方法を示しています。デフォルトの「DC」は信号をダイレクトにオシロスコープに入力します。「AC」はコンデンサを直列に接続して信号を入力します。コンデンサ結合することによって信号の交流成分だけを取り出して測定することができます。「GND」はオシロスコープの基準電位が入力されます。チャネル間での信号の干渉を抑制したいとき使用します。

「BW Limit」は信号に重畳するノイズの影響を排除したいときに使用する機能です。デフォルトは「Full」となっていますが「20M」を選択すると20MHz以上のノイズ成分がカットされます。波形をきれいに表示したい場合に便利な機能です。

「Probe」には測定に使用しているプローブの情報を入力します。一般的な回路の測定のいては10:1のパッシブプローブを使用します。ここでは「Probe」から「10:1」を選択してください。

 

        

 

その他の項目は状況に応じて使用するものですが、例えば電流プローブを使用する場合は「Unit」を「V」から「A」に変更しておくと便利です。

 

スケール設定

つぎに垂直軸の表示範囲(スケール)を調整します。スケールの調整は上側のノブで行います。スケールを細かく調整したい場合はノブを押し込むことで詳細モードに切り替わります。

ダイヤルを右向きに回すと電圧スケールが小さくなり、波形が拡大されていきます。反対にダイヤルを左向きに回すと電圧スケールが大きくなって、波形が縮小されます。オシロスコープは画面の表示範囲に対して垂直分解能が割り当てられるため、できるだけ画面全体に波形が表示されることが好ましいです。

 

        

 

そのためここでは500mV/divに設定しています。

 

     

ただしこのままだと波形が見切れてしまっているため、垂直軸の基準となる位置をオフセット電圧によって調整します。オフセット電圧の調整は下側のノブで行い、右側に回すとプラス方向に、左側に回すとマイナス方向にオフセット電圧がかかります。

 

        

 

ここでは波形全体の収まりが良い-1.5Vに設定しています。なおオフセット電圧の調整がうまくいかずに波形を見失った場合は、ノブを押し込むことでオフセット電圧を0Vに戻すことができます。

 

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