この記事ではオシロスコープで使用する様々なプローブの種類と特徴について解説しています。

高圧プローブ

        

OWON P4060 (100:1、2000V)

 

高圧プローブは汎用プローブと比較して、高い電圧の測定に適したプローブです。汎用プローブよりも入力インピーダンスが高く設計されているため、オシロスコープには大きく減衰された電気信号が入力されます。信号の減衰比は100:1のものが一般的ですが、より高い電圧を測定可能とするために1000:1のものも存在します。

 

FETプローブ

        

Siglent SAP1000

 

FETプローブは入力段にFET(電界効果トランジスタ)を使用した電圧プローブです。FETは入力インピーダンスが非常に高く、入力容量も1pF以下と非常に小さいため、負荷効果を最小限に抑えて電気信号を測定できます。また入力容量が小さいことで、高速信号や高周波信号の測定にも適しています。FETプローブを使用するうえで注意すべき点は、使用可能なオシロスコープに制限があることです。

 

プローブへの電源供給

FETのような能動素子を動作させるには電源が必要になります。FETプローブに対応したオシロスコープは、BNC端子に電源供給用の端子が別途設けられています。この端子を介してFETに電源を供給します。なお電源供給用の端子形状はメーカーによって形状が異なるため、メーカー間の互換性は低いです。

 

50Ω入力への対応

プローブヘッドからオシロスコープまでは、特性インピーダンスが50Ωの同軸ケーブルで接続されています。FETプローブはこの同軸ケーブルに対してインピーダンスマッチングされており、オシロスコープの入力インピーダンスも同様に50Ωへの切り替えが必要になります。

 

広い周波数帯域

FETプローブは高周波信号の測定に対応しているため、オシロスコープ本体も相応の周波数帯域が必要になります。

 

差動プローブ

        

Siglent SAP2500D

 

差動プローブは2つの入力信号の電圧差を測定するために使用します。差動信号の測定だけでなく、商用電源などの交流信号の測定にも適しています。汎用プローブで商用電源を測定するにはGNDを接続しないフローティング測定が必要になりますが、差動プローブは測定対象の端子に直接接続して測定できます。これによって1チャネルで2つの信号を同時に測定でき、かつ感電などのリスクを避けて安全に測定できます。

差動プローブにはプローブヘッドに高性能な差動アンプが内蔵されています。差動アンプは高いコモンモード除去比(CMRR)を持つため、ノイズの影響を受けづらいです。また差動アンプの種類によって高速信号に適したものや高電圧信号の測定に適したものなどがあります。

 

電流プローブの種類と特徴

電流プローブはオシロスコープで電流を測定するために使用するプローブで、ワイヤーハーネスをクランプして、そこで発生する磁束をもとに電流を測定します。

        

 

電流プローブも方式の違いにより、パッシブとアクティブに分かれます。パッシブの電流プローブはコイルの逆起電力を利用して電流を検出します。この逆起電力は電流の時間変化di/dtによって生じるため、交流電流しか測定できません。一方でアクティブの電流プローブはホール素子のホール効果を使って電流を測定します。ホール素子は直流磁界に反応するため、直流信号と交流信号の両方を測定できます。

 

カレントトランス(AC)

        

PINTECH  PT-720

 

カレントトランスは磁気コアに巻線が施された電流プローブです。磁気コアが2つに分割されており、測定対象となるワイヤーハーネスをクランプして電流を測定します。磁気コアの材質や巻線の巻数によって周波数特性が異なります。そのため、商用電源など測定するための低周波用、スイッチング電流を測定するための広帯域用といったように、用途によって磁気コアの材質が異なります。

 

ロゴスキーコイル(AC)

        

MICSIG  RCP300-XS

 

ロゴスキーコイルは非磁性体のコアに導線を巻き付けた構造の電流プローブです。コア材に磁性体を使用していないため磁気飽和による制限がなく、大電流の測定が可能です。また形状がフレキシブルで、かつ応答性にも優れるため、高速なスイッチングデバイスの電流測定にも適しています。なおロゴスキーコイルからは逆起電力による時間微分値di/dtが出力されます。オシロスコープで電流波形を表示するには、オシロスコープとロゴスキーコイルの間に積分器を解する必要があります。

 

ホール素子(DC+AC)

        

PINTECH  PT-2710(バッテリー駆動)

 

ホール素子方式のアクティブプローブは、磁気コアとホール素子を組み合わせた電流プローブです。磁気コアによって磁束を閉じ込めて、その磁場中にホール素子を配置することで、直流と交流の両方の電流が測定できます。なおホール素子の出力電圧は微小であるため、アンプで増幅してオシロスコープに信号を入力します。測定精度を向上させるために、ホール素子とアンプを一体化したホールICを使用したものや、負帰還回路を追加したゼロフラックス方式のものなどがあります。

 

特殊プローブ

特殊プローブはオシロスコープで電圧や電流以外を測定するために使用するプローブです。ここでは光プローブ、ロジックプローブ、マイクについて取り上げます。

        

 

 

光プローブ

        

Micsig  MOIP100P

 

光プローブはセンサ部で電気信号を光信号に変換し、コントローラ部まで光ファイバーによって信号を伝送します。コントローラ部では光信号から電気信号に戻して、オシロスコープに電気信号を入力します。オシロスコープと回路間を電気的に絶縁した状態で測定できることが大きな特徴で、高電圧回路でも安全に測定できます。また周波数帯域が広くて高いコモンモード除去比(CMRR)を持つため、ノイズの多い環境でも正確な測定が可能です。一方で、一般的なプローブと比較すると価格は非常に高価であるため、日常的に使用するというよりも研究開発などの限られた用途で使用されることが多いです。

 

ロジックプローブ

        

Siglent  SPL1016

 

ロジックプローブは、デジタル信号を複数チャネル同時に測定するためのプローブです。通常の電圧プローブと違って、プローブヘッドでAD変換することでデジタルデータをオシロスコープに入力します。8〜16チャネル程度を同時に測定できるため、デジタルバスやシリアル通信のタイミング分析などの測定に適しています。またシリアル通信であれば、オシロスコープに専用のデコーダーが搭載されているため、ロジックプローブを使用することでデバッグを効率化できます。

 

マイクプローブ

マイクプローブは、音を電気信号に変換するためのプローブです。通常のマイクロフォンと違って、オシロスコープ用に最適化されています。主な特徴としては周波数帯域が広いことと低ノイズであることが挙げられます。また集音の指向性を選択できるものもあります。

 

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