電磁波

電磁波は、電場と磁場が直交する形で空間を伝播する波であり、光速(約299,792,458 m/s)で進むエネルギーの形態です。マクスウェルの方程式により、その性質は記述され、無線通信、光ファイバー通信、レーダー、医療イメージングなど、幅広い技術に応用されています。電磁波は、その波長や周波数に応じて以下のように分類されます:

  • ガンマ線 (γ線):10 pm以下(>30 EHz)

  • X線:0.01〜10 nm(30 PHz〜30 EHz)

  • 紫外線 (UV):10〜400 nm(750 THz〜30 PHz)

  • 可視光線:400〜700 nm(430〜750 THz)

  • 赤外線 (IR):700 nm〜1 mm(300 GHz〜430 THz)

  • マイクロ波:1 mm〜1 m(300 MHz〜300 GHz)

  • ラジオ波:1 m以上(3 Hz〜300 MHz)

電磁波の性質には、反射、屈折、回折、干渉などがあり、これらの現象は通信システムの設計において重要です。


周波数スペクトラム

周波数スペクトラムは、信号が含む周波数成分の分布を示すもので、信号の解析に欠かせない指標です。一般的に、スペクトラムは以下のような特徴を持ちます:

  • 狭帯域信号:特定の周波数帯に集中している信号(例:ラジオ放送)

  • 広帯域信号:広範囲の周波数成分を持つ信号(例:パルス信号)

  • ホワイトノイズ:全周波数成分が均等に含まれる信号

周波数スペクトラムは、フーリエ変換を用いて時間領域信号から求められ、信号の強度、ノイズレベル、干渉の影響を評価する際に利用されます。


波長と位相

**波長(λ)**は、電磁波が1周期を完了するのに要する空間的な長さであり、以下の関係式で定義されます:

λ=cf\lambda = \frac{c}{f}

ここで、cは光速、fは信号の周波数です。例えば、2.4 GHzのWi-Fi信号の波長は約12.5 cmです。

位相は、波の周期的な進行の状態を示す角度で、0度から360度(または0から2πラジアン)で表されます。異なる位相の信号が重ね合わされると、干渉が発生し、強度や方向が変化する場合があります。


振幅と周波数

振幅は信号の強さを示すパラメータであり、電圧や電流の最大値として定義されます。信号のエネルギーや電力は振幅に大きく依存し、高振幅の信号は長距離伝送に適しています。

**周波数(f)**は、信号が1秒間に繰り返される回数を示し、単位はヘルツ(Hz)です。周波数が高いほど波長は短くなり、信号はより高い帯域幅を必要とします。一般的な通信規格では、以下のような周波数が使用されます:

  • AMラジオ:530 kHz 〜 1.7 MHz

  • FMラジオ:88 MHz 〜 108 MHz

  • Wi-Fi:2.4 GHz / 5 GHz


パワーと信号強度

信号のパワー(電力)は、信号が伝送するエネルギー量であり、以下の式で定義されます:

P=V2/RP = V^2 / R

ここで、Vは信号の電圧、Rは負荷の抵抗です。信号強度は、受信側での信号のエネルギー量を示し、伝送距離やノイズ耐性に大きな影響を与えます。

  • EIRP(等価等方輻射電力):アンテナゲインを考慮した送信電力

  • RSSI(受信信号強度インジケータ):受信信号の強度を示す指標


表皮効果と導電率

表皮効果は、高周波信号が導体内部ではなく、その表面近くに集中して流れる現象です。これは、導体内部での渦電流や磁場の影響により発生します。表皮効果により、導体の抵抗が周波数に応じて増加するため、高周波回路では導体の選択や形状設計が重要です。

**導電率(σ)**は、材料の電気伝導のしやすさを示す指標で、以下の式で定義されます:

σ=1ρ\sigma = \frac{1}{\rho}

ここで、ρは抵抗率です。高導電率の材料(例:銅、銀)は信号損失が少なく、効率的な信号伝送に適しています。


帯域幅とQ値

帯域幅は、信号が伝送可能な周波数範囲を示し、通信システムのデータレートや伝送効率に大きな影響を与えます。以下のように定義されます:

B=fhigh−flowB = f_{high} - f_{low}

**Q値(品質係数)**は、共振回路やフィルタの選択度を示す指標で、以下の式で表されます:

Q=frBQ = \frac{f_r}{B}

ここで、f_rは共振周波数です。高Q値は、選択性が高く、エネルギー損失が少ないことを意味します。


位相雑音と信号純度

位相雑音は、信号の位相が時間的に揺らぐ現象で、特に周波数変調や位相変調を使用する通信システムで問題となります。位相雑音は、信号の純度や安定性に大きく影響し、以下のような要因で発生します:

  • 発振器やPLLの回路設計

  • 温度変化や電源ノイズ

  • 半導体デバイスの特性

信号純度は、信号が望ましい基本波でどれだけ構成されているかを示し、スプリアスや高調波の混入が少ないほど純度が高いとされます。高純度な信号は、誤り率が低く、長距離伝送に適しています。