スペクトラムアナライザ入門:基本原理から使い方・選び方まで

スペクトラムアナライザは、電波や音声、各種電子信号の「周波数成分」を可視化するための計測器です。オシロスコープが時間軸で波形を観測するのに対し、スペクトラムアナライザは周波数軸で信号を分析する装置であり、特に高周波(RF)やEMC測定の分野で広く活用されています。

本記事では、初めての方でも理解しやすいよう、スペクトラムアナライザの基本原理から応用例、選定のポイントまでを体系的に解説します。

 

スペクトラムアナライザとは?

スペクトラムアナライザ(Spectrum Analyzer)は、入力信号を周波数成分に分解し、それぞれの周波数に含まれる信号の強度(パワー)を視覚的に表示する測定器です。

通常、表示画面の横軸は周波数、縦軸は信号レベル(dBm など)を示し、どの周波数帯域にどれくらいのエネルギーが含まれているかを一目で把握できます。

たとえば、無線通信機器の出力信号、スイッチング電源のノイズ、オーディオ機器の高調波成分などを「周波数の視点」で分析するのに欠かせないツールです。

 

スペクトラムアナライザの動作原理

スペクトラムアナライザは、以下の処理フローにより信号の周波数スペクトルを解析・表示します:

  1. 入力信号の周波数変換(ダウンコンバート)

  2. 分解能帯域幅(RBW)によるフィルタリング

  3. ログアンプでのレベル検出

  4. スイープと表示処理

従来はアナログ式のスーパーへテロダイン方式が主流でしたが、近年はFFT(高速フーリエ変換)方式のリアルタイム・スペアナも増えています。

 

どんな場面で使われるのか?(主な用途)

用途 具体例
無線通信の測定 Wi-Fi、Bluetooth、5G、LPWAなどの信号解析
EMCノイズ対策 電源回路やモーターから発生する放射ノイズの測定
RFデバイスの特性評価 アンプ・フィルタ・ミキサなどの周波数応答の測定
オーディオ・音響分野 高調波解析、SN比、歪率の測定
教育・実験・研究用途 周波数分析の可視化、波形解析の学習教材としての活用

 

基本操作のステップ

スペアナを使用する際の基本操作フローは次の通りです:

  1. センター周波数とスパンを設定する

  2. RBW/VBW(分解能帯域幅/ビデオ帯域幅)を適切に選択

  3. スイープ時間や検波モード(ピーク/平均など)を設定

  4. トリガやマーカ機能で解析ポイントを可視化

  5. 測定結果を保存またはレポート出力

プリセットモードや自動測定機能を活用すれば、初心者でも効率よく測定を開始できます。

 

機種を選ぶ際の重要なポイント

スペクトラムアナライザを選定する際は、下記の要素を確認しましょう:

1. 周波数範囲

目的の信号帯域を十分にカバーする最大周波数が必要です。

2. 分解能帯域幅(RBW)

信号をどれだけ細かく分離できるかを決める重要な要素です。

3. DANL(表示平均雑音レベル)

小さな信号を測定するには、DANLの低さが鍵になります。

4. 位相ノイズやTOI(3次インターセプト)

高周波測定精度を評価するための重要なスペックです。

5. その他の機能

リアルタイム解析、トラッキングジェネレータ、EMIフィルタ機能など、用途に応じた拡張性もチェックしましょう。

 

測定精度を高める活用のコツと注意点

  • アッテネータやダミーロードを適切に使用:過大入力による破損を防止します。

  • 高品質なプローブや同軸ケーブルを使用:信号の歪みや反射を抑えるために重要です。

  • 測定環境のノイズ対策も忘れずに:外来ノイズを排除するためにシールドルームや接地も活用しましょう。

 

まとめ:信号の「見える化」を実現するパートナー

スペクトラムアナライザは、信号の周波数的な“正体”を明らかにする強力な測定ツールです。高周波回路の評価はもちろん、製品開発や品質管理、トラブルシュートの現場でも活躍しています。

用途に合ったスペックと機能を備えた1台を選ぶことで、より正確かつ効率的な測定が可能になります。

T&Mコーポレーションでは、SIGLENT、OWONをはじめとする多様なスペクトラムアナライザを取り扱っており、初めて導入される方にも丁寧なご案内を提供しています。製品選定やデモ機貸出など、ぜひお気軽にご相談ください。