半導体CV特性アナライザとは?
〜容量-電圧特性の測定でデバイス構造を可視化〜
CV特性とは何か?
CV特性(Capacitance-Voltage特性)とは、電圧を変化させたときにデバイスの端子間に現れる静電容量の変化を測定したものです。主に以下の目的で活用されます:
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MOS構造における酸化膜厚やドーピング濃度の評価
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PN接合やショットキー接合の解析
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絶縁破壊やトラップ状態の検出
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信頼性試験や製品スクリーニング
CV特性はDC測定では得られない、材料や構造の内部情報にアプローチできる測定手法として、半導体デバイスの研究・開発・品質管理に欠かせない技術です。
半導体CV特性アナライザの基本構成
CV測定には、次のような装置構成が一般的です:
装置 | 役割 |
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LCRメーター/インピーダンスアナライザ | 容量の測定 |
バイアス電源 | デバイスに電圧を印加 |
CV特性測定用プローバー | ウェハや素子への接続 |
解析ソフトウェア | 測定データの可視化・解析 |
最近ではこれらが一体化されたCVアナライザシステム(例:Keysight B1505A、Techmize CV-4000シリーズ)も多く、直感的な操作で高精度なCV測定が可能です。
測定原理と基本モード
CVアナライザでは、主に以下のモードを使い分けて測定します:
1. 高周波(HF)CV測定
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1MHz程度の信号で測定。高速応答するキャリアの動きだけを反映
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MOS構造の酸化膜厚や表面状態密度の評価に有効
2. 低周波(LF)CV測定
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数kHz以下の信号で測定。トラップの影響も含めた特性が得られる
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トラップ準位や界面準位の評価に用いられる
3. Quasi-static CV測定(準静的)
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電圧をゆっくり変化させて測定。高感度だが時間がかかる
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微小容量の検出や薄膜評価に有用
代表的なアプリケーション
● MOSキャパシタの特性評価
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酸化膜厚(Tox)の導出
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フラットバンド電圧(Vfb)の抽出
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ドーピングプロファイルの逆解析
● パワーデバイスの評価(SiC、GaNなど)
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高耐圧素子における拡散層の均一性確認
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絶縁破壊の検出
● 太陽電池/有機デバイス
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キャリア蓄積や障壁評価
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劣化分析や寿命試験
CVアナライザ選定時のポイント
CV特性測定器を選ぶ際は、以下のポイントを重視しましょう:
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周波数レンジ:1kHz~2MHz以上の測定に対応しているか
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バイアスレンジ:±100V以上のスイープ可能か(高耐圧デバイス用)
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測定分解能:fFレベルの微小容量が測定可能か
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安全性・サージ保護:プローブ・治具に絶縁対策がなされているか
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データ解析機能:内蔵ソフトでドーピングプロファイル解析などが可能か
おすすめメーカーと製品の比較
メーカー | 代表製品 | 特長 |
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Keysight(旧Agilent) | B1500A/B1505A | 高精度・自動測定に対応。大学・研究機関で定番 |
TECHMIZE | CV-4000シリーズ | 高電圧対応、低価格。パワーデバイス評価にも最適 |
Chroma | 11210シリーズ | パラメータアナライザ一体型構成あり |
Hioki(日置電機) | IM7587 | LCR測定に特化、簡易CV測定が可能 |
Keithley(Tektronix) | 4200A-SCS | SMU統合型でCV/IV統合解析が可能 |
まとめ
半導体CV特性アナライザは、MOS構造やPN接合の電気的特性を高精度に把握できる計測器です。装置の選定にあたっては、測定周波数・電圧レンジ・分解能だけでなく、データ解析機能や安全性にも注目しましょう。
CV特性解析は、見えない構造や欠陥の可視化、工程管理、信頼性評価において不可欠な手段であり、パワーデバイスや先端材料の開発でもますます重要性が高まっています。
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