インパルス巻線試験機とは
~モータやコイルの絶縁劣化を非破壊で検出する高電圧試験装置~
■ 概要
インパルス巻線試験機(英語:Impulse Winding Tester / Surge Tester)は、コイルやモータ巻線に高電圧インパルス(過渡的なパルス波形)を印加し、絶縁不良や巻線間ショートの有無を非破壊で検査する装置です。
主に以下のような対象で使用されます:
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モータ(ステータ、ロータ)
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トランス・リアクトル
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インダクタ・チョークコイル
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EV駆動用モータ、家電用モータなど
■ 測定原理
試験機は数百V~数千Vのインパルス電圧を巻線に印加し、そのときの**応答波形(オシロスコープ状)**を観測します。
正常な巻線と、絶縁不良や部分ショートがある巻線では波形の形状が異なり、その差分を比較することで不良の有無を判断します。
■ 主な用途
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量産ラインでの全数検査(インライン対応)
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EV・家電モータの絶縁信頼性チェック
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リワーク後の再検査や定期保守
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巻線間ショート・ターン間短絡の早期発見
■ 測定パラメータ
項目 | 内容 |
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インパルス波形 | 応答波形の形状(減衰、周期、ピーク等)を観測 |
波形比較 | 基準波形とのオーバーレイ比較 |
Δエリア判定 | 面積差(Energy差)で合否を判定 |
Q値測定 | 減衰特性を数値で表示し、状態を評価 |
異常点検出 | 巻線のどの位置に不良があるかを推定(高機能機種) |
■ 関連用語と定義
用語 | 定義 |
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サージ電圧(インパルス電圧) | 短時間かつ高電圧のパルス波形。コイルの耐圧を検査するために使用される。 |
Δエリア法 | 応答波形と基準波形の差分面積(Energy差)を用いて良否判定を行う手法。 |
Q値(Quality Factor) | 波形の減衰度合いを数値化したもの。Q値が低下すると絶縁劣化の兆候。 |
ターン間ショート | コイルの隣接する巻線間で絶縁が破れ、短絡している状態。 |
■ 使用するポイント
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✅ 非破壊検査が可能なため、製品を壊さずに良否判定できる
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✅ 繰り返し検査に強い:製造現場や保守点検でも使用可能
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✅ オシロスコープ波形を用いた直感的な比較
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✅ 自動判定機能やリミット設定による省人化にも対応
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✅ 他の試験(絶縁抵抗・耐電圧など)との組合せで総合品質管理
■ まとめ
インパルス巻線試験機は、モータ・コイル製品の信頼性を確保するための必須試験装置です。
特にEVモータや高密度巻線製品においては、ターン間ショートの早期発見が製品寿命に直結するため、導入の重要性が高まっています。
T&Mコーポレーションでは、巻線仕様・電圧条件・生産環境に応じた最適なモデル選定とデモ機対応も行っております。