インパルス試験とは?

絶縁性能の確認に欠かせない高電圧パルス試験の基本

インパルス(Impulse)とは、短時間に印加される高電圧パルス信号のことを指します。インパルス試験は、電子部品や電気機器に瞬間的な過電圧が加わった場合の耐性を評価するための試験方法であり、主に絶縁性能の確認耐サージ試験として用いられます。

電力機器、トランス、モーター、コイルなどの製品は、落雷や開閉サージなどの突発的な高電圧にさらされる可能性があり、これらのストレスに耐えられることが求められます。インパルス試験は、こうした実使用環境を模擬し、製品の信頼性・安全性を担保するための重要な試験です。

インパルス波形の種類

インパルス試験では、用途に応じてさまざまな波形が使われます。代表的なインパルス波形は以下のとおりです。

種類 特徴 主な用途
1.2/50μs 波形 立ち上がり1.2μs/立ち下がり50μs 高電圧機器の耐雷インパルス試験(IEC 60060など)
10/700μs 波形 通信機器や低電圧機器向けの試験波形 IEC 61000-4-5などのEMC規格対応
矩形波(方形波) 立ち上がりが速く、一定時間一定電圧 コイルや巻線の応答確認など
リング波形(減衰正弦波) LC回路の自然応答を模擬 巻線検査・ターン間ショートの検出

 

インパルス試験の主な対象機器と役割

インパルス試験は、以下のような部品・機器に対して行われます。

  • トランス・リアクタ・コイル
    → 絶縁劣化や巻線間ショートの検出

  • モーター(AC/DC/ステッピング)
    → ターン間不良・コイルの断線・接続不良の確認

  • プリント基板(基板実装コイル等)
    → 落雷など外部サージへの耐性検証

  • 高電圧ケーブル・絶縁体
    → 雷サージ模擬や過電圧耐性確認

 

インパルス試験の方式

インパルス試験には大きく分けて2つのアプローチがあります。

① 耐電圧試験(破壊試験)

製品に規格定められた高電圧インパルスを印加し、絶縁が破壊されるかどうかをチェックする試験です。特にIEC・JISなどの国際規格に基づく型式試験で多く用いられます。

② 巻線インパルス試験(非破壊検査)

比較的低めのインパルス電圧を印加し、部品の応答波形をモニタリングして、正常品との波形差から微細な不良を検出します。モーターやトランスの量産検査では主流の方式です。

 

インパルス試験機の主な仕様と選定ポイント

インパルス試験機を選定する際は、以下の項目が重要です。

  • 出力電圧レンジ:試験対象の定格に合わせて(例:0.5kV~10kV)

  • 波形タイプの切替:用途に応じた波形(1.2/50μs、10/700μsなど)に対応可能か

  • 波形比較機能:マスターデータとリアルタイムで比較し、良否を自動判定

  • 多チャンネル対応:多相モーター・多巻線トランスなど同時検査が必要な場合

  • 記録・出力機能:試験データの保存、外部連携(USB, LAN)対応

 

インパルス試験の国際規格と準拠

インパルス試験は、以下のような国際規格で定義されています。

  • IEC 60060:高電圧試験技術(インパルス耐電圧など)

  • IEC 61000-4-5:雷サージ試験(EMC対策)

  • JIS C 1102:トランス・コイルのインパルス試験

  • UL 1446, IEEE Std 522:北米地域の巻線試験規格

 

インパルス試験と製造品質の関係

インパルス試験は単なる通電チェックではなく、潜在的な不良の予兆を検出するための先制的品質管理手法です。特に以下のようなシーンで活用されます:

  • 生産ラインの最終検査

  • 出荷前検査(出荷試験)

  • 受入検査(外注巻線品の品質確認)

  • 定期点検・リワーク時の信頼性評価

 

まとめ

インパルス試験とは、製品の絶縁性能や巻線の健全性を短時間かつ非破壊で評価できる重要な試験手法です。特に高信頼性が求められるモーター、トランス、電子機器の分野では、標準的な品質保証手段として位置づけられています。

機器選定や導入時の比較検討に関しても、お気軽にご相談ください。