インピーダンスと反射係数は、RF高周波回路や信号伝送において重要な概念であり、信号の効率的な伝送やエネルギー損失の抑制に関わる基本的なパラメータです。
1. インピーダンス (Impedance)
1.1 定義
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インピーダンス (Z) は、交流信号が伝送線路や回路を通過する際の電圧と電流の比で定義されます。
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単位はオーム (Ω) で表され、**実数成分(抵抗)と虚数成分(リアクタンス)**から構成されます。
Z=R+jXZ = R + jX
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R:抵抗(抵抗成分)
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X:リアクタンス(インダクタンスやキャパシタンス成分)
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j:虚数単位(j² = -1)
1.2 特殊なケース
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純抵抗回路:リアクタンス (X) がゼロの場合、Zは完全に実数。
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リアクタンス回路:抵抗 (R) がゼロの場合、Zは完全に虚数。
1.3 特性インピーダンス (Characteristic Impedance)
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伝送線路(同軸ケーブルやマイクロストリップライン)の場合、特性インピーダンス (Z0Z_0) は、その物理的構造や材料によって決まります。
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一般的な同軸ケーブルの特性インピーダンスは50Ω(RF用途)や75Ω(テレビ用途)が標準です。
2. 反射係数 (Reflection Coefficient)
2.1 定義
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反射係数 (Γ, Gamma) は、信号がインピーダンス不整合によって反射される割合を表す係数です。
Γ=ZL−Z0ZL+Z0\Gamma = \frac{Z_L - Z_0}{Z_L + Z_0}
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ZLZ_L:負荷インピーダンス
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Z0Z_0:特性インピーダンス
2.2 反射係数の範囲
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-1 ≦ Γ ≦ 1
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Γ = 0:完全に整合(反射なし)
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Γ = 1:完全反射(負荷が開放)
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Γ = -1:完全反射(負荷が短絡)
2.3 反射係数と電力反射率
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電力反射率 (R) は、反射係数の絶対値の二乗で求められます。
R=∣Γ∣2R = |\Gamma|^2
3. インピーダンス整合 (Impedance Matching)
3.1 目的
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信号反射の最小化:
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インピーダンスが整合している場合、信号反射がなくなり、エネルギーが効率よく伝送されます。
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最大電力伝送:
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最大電力を負荷に伝送するためには、送信側と受信側のインピーダンスが一致している必要があります。
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3.2 インピーダンス整合の方法
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スタブマッチング(オープンスタブ、ショートスタブ)
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スミスチャートを用いた整合回路設計
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LC回路やトランスを用いた整合
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バランやアンテナチューナーの使用
4. 実用的な指標
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VSWR (Voltage Standing Wave Ratio):
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インピーダンス不整合による電圧の定在波比。
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反射係数を用いて計算可能。
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VSWR=1+∣Γ∣1−∣Γ∣\text{VSWR} = \frac{1 + |\Gamma|}{1 - |\Gamma|}
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Sパラメータ:
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RF回路の反射と透過特性を示すパラメータ。
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特にS11は反射係数に相当。
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5. 例:50Ωシステムでの反射係数
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もし50Ωの特性インピーダンスに対して、負荷が75Ωの場合:
Γ=75−5075+50=25125=0.2\Gamma = \frac{75 - 50}{75 + 50} = \frac{25}{125} = 0.2
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反射率は:
R=∣Γ∣2=0.22=0.04(4R = |\Gamma|^2 = 0.2^2 = 0.04 (4%)
インピーダンスと反射係数は、RF設計やアンテナシステムにおいて非常に重要な概念です。特に高周波回路では、反射によるエネルギー損失や信号歪みが問題になるため、適切なインピーダンス整合が求められます。