
半導体におけるキャリア濃度とは、半導体材料中に存在する自由電子と**正孔(ホール)**の数を単位体積あたりで表したものです。電流を運ぶ役割を果たすこれら「キャリア」の密度を示す重要な指標であり、半導体の電気特性を決定づけます。単位は通常、$\text{cm}^{-3}$で表されます。
キャリアの種類
半導体には主に2種類のキャリアが存在します。
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自由電子(電子濃度:n)
伝導帯にある電子のことで、負の電荷を持ち、電場をかけると移動して電流を生み出します。
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正孔(正孔濃度:p)
価電子帯において電子が抜けた穴のことで、正の電荷を持つ粒子として振る舞い、電場をかけると電子とは逆方向に移動して電流を生み出します。
キャリア濃度の重要性
キャリア濃度は、半導体デバイスの性能に直接影響します。
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導電率の制御: キャリア濃度が高いほど、電流が流れやすくなり、導電率が高くなります。
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デバイス特性の最適化: トランジスタやダイオードなどの動作速度や電圧特性は、キャリア濃度によって調整されます。
真性半導体と不純物半導体
半導体は、純粋な状態の真性半導体と、不純物を添加した不純物半導体に分けられ、キャリア濃度はそれぞれ異なります。
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真性半導体
不純物を含まない純粋な半導体で、熱エネルギーによって価電子帯から伝導帯へ電子が励起することで、電子と正孔が同数発生します。この時のキャリア濃度を真性キャリア濃度(ni)と呼び、n=p=ni の関係が成り立ちます。
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不純物半導体
意図的に不純物(ドーパント)を添加することで、キャリア濃度を制御した半導体です。
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n型半導体: 電子を供給する不純物(ドナー)を添加したもので、電子が多数キャリアとなります。 となり、電子濃度が支配的です。
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p型半導体: 正孔を供給する不純物(アクセプタ)を添加したもので、正孔が多数キャリアとなります。 となり、正孔濃度が支配的です。
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キャリア濃度は、半導体のドーピング濃度、温度、バンドギャップなどの要因によって変化し、半導体デバイスの設計や製造において非常に重要なパラメータです。