サンプルレート(Sampling Rate)とは

~アナログ信号をデジタル化する際の“時間軸の分解能”~


■ 定義

**サンプルレート(Sampling Rate)**とは、アナログ信号を一定時間ごとにデジタル信号として取り込む回数を示す指標です。
単位は サンプル毎秒(Samples per second, Sa/s) で表され、次のように略記されます:

  • 1 GSa/s = 10億回/秒

  • 1 MSa/s = 100万回/秒

  • 1 kSa/s = 1,000回/秒

このレートが高いほど、アナログ信号の微細な変化をより正確に捉えることができます。


■ 基本原理:ナイキスト定理

サンプルレートは、測定したい信号の最高周波数の2倍以上である必要があります。
これを ナイキスト定理(Nyquist Theorem) といい、以下の式で表されます:

fsampling≥2×fsignalf_{sampling} \geq 2 \times f_{signal}

例えば、最大100MHzの信号を観測したい場合、最低でも200MSa/sのサンプルレートが必要です。


■ 測定器における具体例

測定器 一般的なサンプルレート範囲 説明
✅ デジタルオシロスコープ 10MSa/s ~ 10GSa/s 高速波形を精密に記録するために高レートが必須
✅ データロガー/レコーダー 10Sa/s ~ 1MSa/s 長時間記録に最適。ノイズは抑えやすいが細かい変化は捉えにくい
✅ LCRメーター(高速モデル) 1~100回/秒(≠Sa/s) 実際はサンプルレートより「測定スピード」が重要
✅ スペクトラムアナライザ(リアルタイム型) 数十MSa/s~数GSa/s(IF帯域幅に依存) 瞬時のRF信号を捉えるには高速サンプリングが不可欠

■ サンプルレートとメモリの関係

高いサンプルレートで波形を取り込む場合、膨大なデータ量を扱うことになります。
そのため、**「メモリ長(レコード長)」**とのバランスが重要です:

  • サンプルレートが高い → 高速現象を観測しやすい

  • メモリ長が短い → 長時間の波形が記録できない

👉 解決策:サンプルレートを可変に設定(インターリーブ/圧縮)


■ サンプルレートと時間軸の分解能の関係

時間分解能=1サンプルレート\text{時間分解能} = \frac{1}{\text{サンプルレート}}

例:

  • 1 GSa/s → 1nsごとの波形ポイント

  • 100 MSa/s → 10nsごとの波形ポイント


■ 注意点:高サンプルレート≠高精度

  • サンプルレートは「どれだけ細かく記録するか」の指標

  • 精度やノイズ性能とは別物(これは「分解能」や「ビット数」で判断)


■ まとめ

項目 内容
定義 アナログ信号をデジタルに変換する際の1秒あたりのサンプル数
単位 Sa/s(Samples per second)
関連性 サンプルレートが高いほど、波形の変化を詳細に再現可能
使用機器 オシロスコープ、リアルタイムスペクトラムアナライザ、A/D変換器など
重要性 高周波信号の解析・異常の捕捉に不可欠

T&Mコーポレーションでは、最大10GSa/s対応の高性能オシロスコープや、リアルタイム信号処理が可能なスペクトラムアナライザを多数取り扱っています。
波形記録の最適なサンプルレート設定や、測定条件のチューニングに関するご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。