スペクトラムアナライザの使い方
スペクトラムアナライザは、信号の周波数成分を可視化し、ノイズや妨害波の解析、無線機器の開発・評価に活用される計測器です。ここでは、基本的な使い方の流れと各操作のポイントをご紹介します。
1. 測定対象を接続する
まず、アンテナやプローブ、または信号源をスペクトラムアナライザの入力端子(RF IN)に接続します。
入力レベルが高すぎると機器が破損するおそれがあるため、必ず事前に信号レベル(電力)を確認してください。
2. 基本パラメータを設定する
スペクトラムアナライザの画面には、横軸に周波数(Hz)、縦軸に**電力(dBm)**が表示されます。以下の主要パラメータを設定します:
パラメータ | 説明 |
---|---|
センター周波数 | 測定の中心となる周波数。測定したい信号の周波数に設定します。 |
スパン | 表示する周波数幅(センター周波数の前後)。広すぎると信号が見えにくくなります。 |
RBW(分解能帯域幅) | 周波数分解能に影響。小さい値ほど細かい信号を分離可能ですが、スイープ時間が長くなります。 |
VBW(ビデオ帯域幅) | 信号の平滑化に使われます。RBWより小さく設定することでノイズを除去できます。 |
リファレンスレベル | 縦軸の最大電力レベル。観測する信号の大きさに合わせて調整します。 |
3. 測定の開始・波形の観察
設定が完了したら、[RUN/STOP]ボタンなどを押して測定を開始します。
画面上に表示されるピーク(信号の最大値)や、複数のスプリアス(不要な信号)を観察して、目的の信号特性を確認します。
4. トラッキングジェネレータの活用(搭載機種のみ)
トラッキングジェネレータ(TG)機能を使えば、フィルタの通過特性やアンプの周波数応答を測定することができます。
例:
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DUT(被測定デバイス)の入力にTG信号を入れ、出力をアナライザに接続
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スパンやRBWを調整し、通過帯域・減衰特性をグラフで確認
5. よく使う補助機能
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マーカ機能:特定周波数でのレベルを数値で表示
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ピークサーチ:最も強い信号を自動検出
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スペクトラムホールド:時間とともに変動する信号を追跡
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EMI測定モード(搭載モデルのみ):電磁妨害測定に特化した表示・フィルタ設定が可能
6. 測定結果の保存・出力
USBメモリやLAN接続などを利用して、測定波形のスクリーンショットやデータ(CSV形式)を保存・出力することが可能です。
※解析や報告書作成時に活用されます。
まとめ
スペクトラムアナライザは、正しく使えば非常に強力な解析ツールですが、設定を誤ると誤測定や機器破損の原因になります。
まずは基本的な使い方に慣れ、徐々に応用測定(EMC評価、変調解析、VNA機能)へとステップアップしていきましょう。