スペクトラムアナライザ入門 ─ 周波数を“見る”ための基本測定器

スペクトラムアナライザ(spectrum analyzer)とは、電子信号に含まれる周波数成分とその強さ(電力)を可視化する測定器です。
信号の**「どの周波数に、どれくらいのレベル(dBmなど)で成分が含まれているか」**を表示し、無線通信・電源回路・EMI対策・音響分野まで、幅広い用途で使用されます。


✅ どんなときに使う?

使用例 内容
無線送信のスペクトル確認 設定通りの周波数・出力で送信されているか確認
ノイズ源の特定 不要な信号(スプリアス・ハーモニクス)を見つける
フィルタやアンテナの評価 減衰帯域、通過帯域、共振周波数の確認
EMC測定の予備評価 製品から出る電磁ノイズを可視化する
オーディオ・音響分析 音声信号の周波数分布を解析(FFT)

✅ 画面の見方(基本)

  • 横軸(X軸):周波数(例:10MHz〜1GHz)

  • 縦軸(Y軸):信号レベル(例:dBm、dBμV)

  • 表示されるピーク:その周波数帯に含まれる信号の強さを示す


✅ 基本的な用語と設定項目

用語 説明
Center Freq(中心周波数) 測定の中心に設定する周波数
Span(スパン) 表示する周波数の幅(範囲)
RBW(分解能帯域幅) 周波数軸の解像度、狭いと細かいピークも見える
Ref Level(基準レベル) 画面の一番上のレベルを何dBmにするか
Sweep Time(スイープ時間) 1回の測定にかける時間(速い=更新速い、遅い=精度高い)

✅ スペクトラムアナライザの種類

種類 特長
アナログ式 古典的な方式、現在はほぼデジタルに置き換えられている
デジタル/FFT式 高速・高分解能で、小型化・高機能化が進む
リアルタイムスペアナ 数μ秒単位の変化も捉えられる、ノイズ瞬断解析向き

✅ 入門者が気をつけたいポイント

  • プローブやケーブルで信号を正しく取り込む

  • 周波数・スパン・レベル設定を目的に応じて最適化する

  • 微弱信号はプリアンプを使用すると見やすくなる

  • 外部ノイズ(無線・Wi-Fiなど)と測定対象を区別する意識を持つ


まとめ

  • スペクトラムアナライザは、信号の「周波数の中身」を見るための基本測定器

  • 通信・EMC・音響・研究・教育など多用途に対応

  • 初心者でも「中心周波数・スパン・レベル」の基本操作を押さえればすぐに使いこなせる


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