ファンクションジェネレータ入門(1)ファンクションジェネレータとは?
■はじめに
電子計測や電子回路の実験において、信号を自在に作り出すことができる「ファンクションジェネレータ(Function Generator)」は欠かせない存在です。正弦波や方形波、三角波などの基本波形を出力し、それを使って回路の応答を調べたり、装置の動作を模擬したりすることができます。
オシロスコープと並び、電気・電子分野では最初に使い方を学ぶべき基本的な測定器です。本稿では、ファンクションジェネレータの基本的な役割と構造、代表的な出力波形、そして用途についてやさしく解説します。
■ファンクションジェネレータの役割
ファンクションジェネレータは、設定した波形・周波数・振幅・オフセットをもとに、交流信号(AC)を生成し出力する装置です。
・ 周波数は数Hzから数MHz、または数百MHzまで可変
・ 振幅(電圧レベル)も数mVから数Vまで調整可能
・ 出力波形の形やパターンを自由に選択
・ オフセット(直流成分)を加えて上下位置を調整可能
これにより、センサやアンプ、フィルタ回路などの応答性を試したり、タイミング信号を疑似的に生成して動作を確認したりと、幅広い用途で使用されます。
■主な出力波形
ファンクションジェネレータで生成できる代表的な波形には以下のようなものがあります。
・ 正弦波(Sine Wave):最も基本的な連続波形。周波数応答やフィルタ特性評価に使われる
・ 方形波(Square Wave):デジタル信号やクロックの模擬、論理回路の入力などに使用
・ 三角波(Triangle Wave):直線的な立ち上がり・立ち下がりがあり、動作確認に有効
・ ランプ波/鋸歯状波(Ramp/Sawtooth):一方向のゆっくりした変化を持つ波形。スイープ制御や動作解析に使われる
・ パルス波(Pulse Wave):立ち上がり/立ち下がり時間、デューティ比などが調整可能な短時間信号
・ ノイズ(Noise):ホワイトノイズなど。EMI評価や雑音耐性試験などに使われる
高機能モデルでは任意波形(Arbitrary Waveform)を定義して、より複雑な信号を出力することも可能です。
■ファンクションジェネレータとオシロスコープの関係
ファンクションジェネレータで生成した信号は、オシロスコープに接続してその波形を目で見ながら確認することで、波形の正しさや信号の応答を視覚的に評価することができます。
・ オシロスコープで波形の周期、振幅、形状を確認
・ 信号のひずみや遅延、応答の異常をリアルタイムで観察
・ ノイズの有無やDCオフセットの影響も目で見て評価可能
このように、ファンクションジェネレータとオシロスコープはセットで使うことで、電子回路の動作検証が非常にスムーズになります。
■よくある使用場面
以下のような場面でファンクションジェネレータは活躍します。
・ RCフィルタやオペアンプ回路の周波数応答測定
・ スピーカーや加速度センサなどの動作試験
・ 論理ICやマイコン回路のクロック信号供給
・ 電子工作におけるLEDの点滅制御、PWM制御の模擬
・ ノイズ耐性評価(ノイズ重畳)、過渡応答試験
教育・研究・開発からメンテナンスに至るまで、非常に幅広い分野で使用されています。
■DDS方式とは?
近年のファンクションジェネレータは「DDS(Direct Digital Synthesis)」というデジタル方式で信号を生成するものが主流となっています。
・ 周波数制御が精密かつ高速
・ 低歪みで安定した波形が生成可能
・ 波形切り替えがスムーズ
・ 任意波形との相性も良好
従来のアナログ方式と比較して、DDS方式は小型・高性能化が可能であり、価格帯もリーズナブルになっています。
■注意すべき点
便利なファンクションジェネレータですが、使用時にはいくつかの注意点があります。
・ 出力インピーダンス(通常50Ω)に対する負荷の整合を取る必要がある
・ DCオフセットを加えすぎると回路にダメージを与える場合がある
・ 高周波ではケーブルや接続部の反射・減衰に注意
・ 波形のエッジ(立ち上がり/立ち下がり)に含まれる高調波成分の影響も考慮が必要
測定対象や用途に応じて、適切な設定と接続が求められます。
■まとめ
ファンクションジェネレータは、電子回路の開発・評価・教育において欠かせない基本ツールの一つです。正弦波や方形波といった基本波形を簡単に出力できるだけでなく、DDS方式によって高精度・多機能なモデルが普及しています。
ファンクションジェネレータ入門 全9回 目次案(案)
第1回 ファンクションジェネレータとは?
基本的な役割や波形の種類(正弦波・方形波・三角波など)、用途とオシロスコープとの組み合わせについて解説。
第2回 出力波形の種類と特性
各種波形の用途・特性・注意点(例えば方形波の立ち上がり、パルス幅など)を詳しく説明。
第3回 周波数・振幅・オフセットの設定方法
よく使う3つの基本パラメータについて具体的な操作方法と応用事例を紹介。
第4回 高機能波形:パルス・ランプ・ノイズ・任意波形
基本波形以外に搭載されている特殊波形や、任意波形(Arbitrary Waveform)の活用方法を紹介。
第5回 バースト・スイープ・リニア/ログ制御
時間変化を加えた信号生成の方法と、フィルタやアンプ特性評価への応用例を紹介。
第6回 外部トリガ・シンクロ機能の使い方
外部機器との同期、波形開始タイミング制御など、高度な実験に必要なトリガ設定を解説。
第7回 実験・開発での活用例
電源回路評価、モータ制御、センサテストなど、実際の応用例に基づいた使い方紹介。
第8回 トラブル事例とその対策
信号出力がうまくいかない、波形が歪む、オシロに信号が映らない等の原因と対処法。
第9回 最新技術と今後の展望
多チャネル化、DDS方式、デジタル波形合成、PC連携など、最近の機能動向や選定ポイン